7月2日、退院後、初の記者会見に臨んだ小池百合子・東京都知事(写真:Pasya/アフロ)

 東京都議会議員選挙が終わった。次期衆院選の前哨戦として注目され、与野党も総力戦で臨んだ結果、圧倒的勝者が不在という「戦国時代」のような議席配分となった。メディアは、与野党並びに特定政党の“圧勝”を前提とした報道をしばしば行うが、選挙は常にわかりやすい構図になるわけではない。そこで気になる次期衆院選への影響並びに展望だが、現時点では与野党とも苦戦する可能性が高く、菅義偉首相の政権維持は既定路線とはいうものの、与党でも野党でもない「第3極」が台頭する気配が感じられる。

世論を察知した都民ファの公約

「明日1日、回ります」

 7月2日、金曜日の夕方、酸素ボンベを携行した東京都の小池百合子知事は、陣営関係者の前でそう語った。過度の疲労で入院を余儀なくされ、テレワーク対応で表舞台から消えていた主役が動き始めた瞬間だった。

 小池氏は都議選投開票前日の7月3日、有権者の前に久しぶりに姿を見せた。移動中の車の中にはやはり酸素ボンベがあった。派手な街頭演説こそなかったものの、20カ所近くの陣営を激励して回った。与党にも野党にも入れたくない層は、露出が少なかった満身創痍の小池氏に同情した。

「小池さんは本当に具合が悪いようだ。仮病ではない」

 小池氏が入院した6月22日夕、小池氏と今も親交のある自民閣僚経験者はこう語っていた。しかし、異なる見方も多かった。「自民党にすり寄りたい小池氏は、都民ファーストの会の応援に入りたくない」「だから入院した。都民ファを見殺しにするつもりだ」「仮病といわれてもおかしくない」。有識者や永田町の玄人たちは一斉に小声でそう指摘していたが、実際、小池氏の体調は本当に悪かった。