そんなわけで、これらが大江氏の代表作であるとは私も思っていないのだが、再開発で大きく変わっていくであろう池袋に、大江氏のこんな建築があるということを知ってほしかったのである。池袋民の1人として、大江氏に大変お世話になった人間の1人として…。今日(掲載元サイトでの記事掲載日)、2021年1月31日は、大江氏が65歳で急逝して1年目の命日である。合掌。
芸術劇場に向け“空に架かるゲート”
そして、冒頭に長々と「池袋ウエストゲートパーク」について書いた言い訳を最後に。
私には、東京都豊島合同庁舎の2つの弓形屋根が、東京芸術劇場に向かって虹のような点線を描く「ゲート」に見えるのである。
原作者の石田氏も、この“空に架かるゲート”を感じたのではないか、と想像してしまうのだ。そうでなければ単に西口を「ゲート」とは訳さないのでは…。石田氏が原作小説を発表したのは、この建物が完成した2年後。真新しい双塔のビルを当然、何度も見上げたはず。この建物がなければ、あの傑作ドラマも生まれなかったかも…。
それは妄想に過ぎないが、意外に知られていない事実も一つ。大江氏は東京大学建築学科時代、芦原義信教授に意匠計画を学んでいた。そう、“空に架かるゲート”は、師・芦原義信氏の建築に架かるゲートでもあるのである。
◎本稿は、建築ネットマガジン「BUNGA NET」に掲載された記事を転載したものです。
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