西口広場の北側に、バスターミナルを挟んで立つ。都税事務所と都税を扱うコンピューターセンターが入る庁舎だ。地下6階・地上7階。「地下6階」というのは間違いではないかと思ってしまうが、地下にコンピューターセンターが納まっているのだ。

 

 7階建ての地上部は、2基のエレベーターの上部に、弓状の屋根がそれぞれ架かる。壁は土壁を思わせる左官仕上げ。そこに丸い穴が規則正しく並ぶ。東京都の庁舎とは思えない、スタイリッシュな外観だ。だが、この建築は私の知る限り、どの建築雑誌にも載っていない。

 大江氏に直接この建築の話を聞いたこともない。ネットで調べると、東西アスファルト事業協働組合の講演記録(1996年)の中に、この建物に触れている部分が見つかった。

 若者が集まることで最近よくテレビなどに出てくる西口広場に面しています。この建物の中身は税務署で、地下にはコンピューター・センターが入っています。ほとんど公共的なプログラムにないものです。

 実は都市の中のほとんどの建築は公共性をもっていません。建築家は都市の中の公共性を主張しますが、そのようなプログラムをもってないことが多い。(中略)ここは商業地区で、池袋駅西口の広場に建つのですが、それ自身はまったく公共性がないプログラムになってるわけです。

 私がここで考えたのは、ある広場、例えば都市の広場に対して塔が建つことによって、何かをシンボライズするわけです。つまり外部の空間を生み出す方法論があるということです。日本では鳥居がありましたし、ヨーロッパの広場に塔があります。塔自身には機能はありませんが、外部の機能として塔が存在するという方法論はあるわけです。そういった方法論で、塔が存在するような建築を考えました。(ここまで大江匡氏/東西アスファルト事業協働組合の講演記録より)

確かに、この建築以外は西口広場側に背を向けて立っているように見える