インドのナレンドラ・モディ首相(2019年5月30日撮影、写真:新華社/アフロ)

(ジャガンナート・パンダ:マノハール・パリカル国防研究所東アジアセンターセンターコーディネーター兼リサーチフェロー)

 印日豪米で構成される「クアッド(日米豪印戦略対話)」内での印日の二国間関係は、このグループを進化させる決定的なベクトルとなっている。明確なコンセプトには欠けているものの、概念的ではあるが「ミドルパワー」関係として強化されてきた「印日特別戦略的グローバル・パートナーシップ(注1)」は、インド太平洋地域の協力を着実に明確化し、クアッドの枠組みを前進させる潜在的可能性を有している。

 従って、二国間、三国間、多国間における印日間の協力関係をより広範な分野で明らかにすることが優先されるべきである。換言すると、印日間の相乗効果は、インド太平洋地域における三国間及びクアッドの枠組みでの協力関係にどのように転化できるのであろうか。また、両国のパートナーシップは、最終的にクアッドを主導的に強化する相乗効果をどのように高めていくことができるのであろうか。

日本は開発援助パートナーであり同志

 2021年3月12日に開催されたクアッド首脳会議(Quad Leadership Summit:QLS)(注2)によって、クアッドが外交の最高レベルにまで高められた。このQLSでは「日米豪印の精神(注3)」という最初の共同声明が発表されただけでなく、気候変動や新興技術、インド太平洋地域におけるワクチン配布に関する作業部会も立ち上げられた。これらの作業部会は、様々な優先事項を共有し、クアッド各国の強みを生かした実用的な協力に努めることを象徴するものである。

 印日関係の相乗効果というものは、両国で相互に類似する慎重な対中政策だけでなく、新時代における地域大国として、地政学的かつ経済的な戦略関係上で描かれるものである。インドは日本を信頼できる開発援助パートナーとみなしており、またインド太平洋地域における安全で安定した包括的海洋領域を創出する「インド太平洋海洋イニシアティブ(Indo-Pacific Oceans Initiative:IPOI)」のような試みを目指す上で中軸となる同志としても捉えている。また日本は、「自由で開かれたインド太平洋(Free and Open Indo-Pacific:FOIP)」とうまく調和するインドの「アクト・イースト政策(Act East Policy:AEP)」の中で大きな存在感を示している。