ピーク時の1カ月の搬送件数300件超──民間救急は新型コロナウイルス感染症との戦いを縁の下で支えている。その1社「民間救急フィール」の齊藤学代表がこの1年間で経験したこと、感じたこととは? 讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が訊く。連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第53回。
ワクチン接種が軌道に乗り始めています。東京と大阪では自衛隊による大規模ワクチン接種センターがスタートしました。この自衛隊もそうですが、コロナ下の医療体制はさまざまな人や組織によって支えられています。国・地方自治体などの行政、保健所、検査機関・・・。民間救急もその一つです。今回は民間救急フィール(東京都日野市)の齊藤学代表に話を伺います。
ダイヤモンド・プリンセス号の患者を搬送
讃井 まずは、民間救急とはどういうものかご説明ください。
齊藤 民間救急とは、転院や入退院、通院などの搬送を行う民間事業者です。ただし、民間救急の規定の中に、「状態の安定されている方の搬送」ということが明記されていまして、緊急性の高い患者や傷病者については消防救急──いわゆるサイレンを鳴らせる公的な救急車の対応ということになります。東京の場合、病院間の転院搬送の約90%は民間救急が担っているというのが現状です。
讃井 ということは、ストレッチャーを使った搬送だけとは限らないのですね。