オリンピックはもはや「犯罪」ではないのか?──人気生物学者の池田清彦氏(早稲田大学名誉教授)は世界的大イベントの欺瞞に憤(いきどお)る。池田氏が許せないオリンピックの悪徳ぶりとは。最新著書『どうせ死ぬから言わせてもらおう』(角川新書)から一部を抜粋・再編集してお届けする。
当初は個人の力を競う大会だったオリンピック
消費資本主義の現代では、何であれ、人気があるというのは金もうけに直結するので、人気のあるスポーツをめぐっては、巨額の金が動くが、囲碁、将棋で動く金は、比較にならないほど少ない。将棋のトッププロでも年収は1億円に届くかどうかである。並のプロ棋士の年収はせいぜい700~800万円程度だと言われている。
それに対して、プロの野球選手やサッカー選手やゴルフ選手の年収は桁違いである。日本のプロ野球選手の2019年度の年俸ランキングをみると、1位の菅野智之(すがの・ともゆき)の年俸6億5000万円から始まって、1億円以上の選手が95人もいる。メジャーとなるとさらに桁が1つ増えて、1位のマックス・シャーザーの2019年度の年俸は3740万ドル(約40億円)である。
囲碁や将棋のトッププロになるための才能と努力は、スポーツのトッププロのそれに勝るとも劣らないと思うけれども、年俸の違いは彼我の市場規模の違いに比例しているわけだ。