昨年末は、日本最古の神社といわれる大神神社(おおみわじんじゃ、奈良県桜井市)に行った。昨年は三島由紀夫没後50年ということもあり、いくつかの雑誌記事やテレビ番組が組まれ、そのなかで大神神社が取り上げられていた。三島の遺作となった『豊饒の海』4部作の2巻目『奔馬』を書くにあたり、三島が取材のためにこの神社を訪れたのである。
どこまでも静寂な大神神社
そういうこともあって、はじめて大神神社に行った。JR桜井線で奈良駅から三輪駅に行く。そこから道案内標識に従ってのんびりと歩いて行けばよい。路地のような商店街を抜けて5、6分ほど歩くと、目指す神社はすぐである。
二の鳥居の先に参道が伸びている。どこまでも静寂である。
そこを歩いていくと、やがて石階段の上に豪壮な拝殿が現れる。
拝殿の背後に三輪山があるのだが、それがご神体に見立てられている。境内は広大である。
三島は自決する4年前の昭和41年に、ドナルド・キーンとともに大神神社を訪ね、社務所に3泊したらしい。三輪山にも登り神事に参加したという。もう昔のことだ。すべてうたかた、という気がする。
ほかのところに行くと奈良に悪い気がする
二の鳥居を出ると、社前に小奇麗な福神堂という素麺店がある。三輪そうめんがうまい。柿の葉寿司2個も付けて1200円である。駅への帰路、来るときには気づかなかった大鳥居が目に入ってきておどろく。おまけをもらった気分でうれしくなる。
この10年の間にはときどき、他所(よそ)に行った。姫路城を見に姫路に行き、ついでに倉敷。金沢城と茶屋街を見に金沢へも行った。そういうときには、ちょっと奈良に悪い気がするのである。今年も6月に行こうかと予定している。いつまで奈良行きがつづくのかわからない。
ほかにも行ってみたいところはある。福井の永平寺、安野光雅美術館がある津和野、風の盆で有名な越中の八尾である。ただ風の盆はもう宿がとれないほどの人気で、これはもう無理かもしれない。
最後に残っているのは、わたしが生まれ育った大分県の竹田市だ。しかし、ちょっと遠すぎるな、とは思う。生きている間になにがなんでも1回は、というほどでもない。奈良は竹田の代役かもしれない。