4月16日の日米首脳会談は、記者会見を見る限り、ほぼ予想通りの内容だった。質疑できる記者を日米ともに事前に決めていたこともバイデン政権らしかった(大統領選挙の時から続いている)。
また、米国の記者二人が首脳会談の中身よりも、(1)米国内での銃規制問題、(2)イラン問題、(3)東京五輪・パラリンピックの開催準備問題と、米国独自の問題を聞いたこと、および東京五輪・パラリンピックへの懸念を示したことも概ね想定内のものだった。バイデン大統領のリップサービスとしての「初の対面での会談」が、米国民にはほとんど注目されていないということである。
実際に米政府内でどのように首脳会談を消化したかについては改めて論じたい。また、ケリー元国務長官が訪中している点についても別の機会に触れる。本稿では、小泉純一郎政権の頃から知日派として顔を出してきたリチャード・アーミテージ元国務副長官(ブッシュ政権時)が台湾を訪問したことの意味について考える。アーミテージ元国務副長官を含めた米元高官3人(他はジェームズ・スタインバーグ元国務副長官、クリス・ドッド元上院議員)の動きを見ると、今回の日米首脳会談の結果から日本は逃れられなくなる可能性がある。
日本のメディアは、通常は保守とリベラルに分かれるが、満州事変の昔から勇ましい話になると突然ベクトルが同じになるらしい。首脳会談の報じ方を見ても、どのメディアも反中ということでは表現の強弱こそあれ一致している。
しかし、台湾と中国の間にある台湾海峡のことに触れることの重み(日本にとってのリスクの大きさ)についてはどこも報じていない。例えば、今後、海上自衛隊の護衛艦が台湾海峡を通過するようになるのかといった話である。2019年にフランスの軍艦が台湾海峡を通過した際、中国はクレームをつけている。
中国は、日本にとって米国と同等の貿易相手国であり、この経済関係を無視した安全保障などあり得ない。菅政権は経団連など日本企業の同意を得ているのだろうか。そもそも、台湾の北にある尖閣列島は日本の施政下にあるからこそ日米安全保障条約第5条の適用対象になっている。では、台湾海峡の有事に自衛隊が行動を担保する法律がどこかにあるのだろうか。
安保法制の制定によって集団的自衛権を適用するということかもしれないが、台湾との同盟関係を持たない日本が行動する場合は米国の後方支援という形になるだろう。その場合、中国が台湾海峡に向かう日本の護衛艦に対して、台湾の北に海軍の軍艦を配置することで邪魔をしたらどうするつもりだろうか。
どれをとっても疑問が残る。