ブリンケン米国務長官と会見する菅首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米国国防省の報道官が日本海を東海と呼んだのはショックだったが、4月2日にワシントン郊外の海軍兵学校で開催された日米韓安全保障担当高官会議も、バイデン政権における日本の立ち位置を考え直さなければならないものだった。

 この会議には、米中の外交トップが議論を交わした「アラスカ会議」に出席したサリバン米国家安全保障担当大統領補佐官、日本から北村滋・国家安全保障局長、韓国から徐薫・国家安保室長が参加した。

 まだ新政権発足100日という状況もあるのだろう。米国側の発表文には3月の米中アラスカ会議での大立ち回りが嘘のように「中国」の名前はなく、米中で合意した北朝鮮の非核化について触れたほかは、現時点での一般的な協議に終わった印象を受ける。

 注目すべきは、冒頭の参加者の紹介を除くと、日韓が出てくる文脈で日本と韓国の名前を最初に出したのがそれぞれ1回ずつと、双方を同じ扱いとし、日韓の関係改善により日米韓の3カ国協力の強化を促している点である。

 日本のメディアは、米国の声明を「インド太平洋地域の安全保障を含む共通の懸念」と解釈して、今回の会議が中国を念頭に置いていたと報道している。しかし、厳密には「インド太平洋地域の安全保障を含む共通の関心事」という程度のものだ。日本の読者は対中強硬策を期待しているのかもしれないが、対中強攻策を意識したかのような声明と呼ぶにはやや無理がある。

 これには以下の理由があったと考えるべきではないだろうか。

 一つは、翌4月3日(厳密には米国東部時間の2日夜)に、中国の王毅外相と韓国の鄭義溶外相が中国のアモイで会談することを意識して、韓国の立場が悪くならないように配慮したという点だ。韓国の鄭外相にとって、中国は初の訪問国であり、米国との対話路線を放棄しつつある北朝鮮問題、および自国の経済に影響を与えかねない中国との経済関係を最優先したことが窺える。

 このため、バイデン政権としては最初から中国との対立姿勢ばかりを見せるのではなく、東アジアの形勢に配慮した格好だ。