「情報の完全性」という虚構
「米国の株式市場は、世界中のあらゆる情報、特にリスクとリターンに影響を与える情報を織り込んでいる」「情報において完全である」とよく主張される。
虚構である。
米国に限らず、世界中に、リスクとリターンに影響する情報を完全に織り込むマーケットはない。
それどころか、「自分に都合のいい情報しか取り上げない」のが古今東西の金融市場の一般的な法則性だ。いま、それが米国で顕著だ。
戦争とインフレのリスク
この21世紀型大恐慌シリーズでは過去4回にわたり、米国の株、国債、通貨ドルが、大暴落の連鎖を起こす必然性について説明してきた。
しかし、そこでは、現在のリアルな重大リスクを説明しなかった。
それは、以下の2点である。
①国際紛争と戦争のリスク
②それに伴う世界的なサプライチェーンの遮断と供給の途絶が生む急激なインフレ
具体的には、台湾をめぐる米中衝突のリスクだ。
石油ショックとインフレは戦争が起こした
歴史的な実例があるから、比較しつつ説明する。
1970年代の2回の石油ショックである。石油ショックで生まれたインフレは、米国で、高金利→景気後退→株式下落→国債消化困難、を招いた。
インフレと不況(スタグネーション)が併存する「スタグフレーション」という言葉が生まれた。歴史をさかのぼろう。
1973年の第4次中東戦争とOPEC(石油輸出国機構)の結成、1979年からのイランイラク戦争、この2つの戦争を契機として、石油のサプライチェーンが途絶する、という恐怖に世界はとらわれた。
しかし、実際には、石油のサプライチェーンは途絶しなかった。
「イスラエルを支持する国には石油を売らない」と日米欧諸国を脅かしたOPEC産油国は、現実には石油を売り続けて巨大なオイルダラーを溜めこみ、「オイルマネー」が誕生した。