台湾有事を巡り対中経済制裁が発動されれば、その影響は天安門事件の時とは大違いだ
「情報の完全性」という虚構
- 「情報の完全性」という虚構
- 戦争とインフレのリスク
- 石油ショックとインフレは戦争が起こした
- 日本の「狂乱物価」とその克服
- 打撃が大きかった米国
- 米国のドルと国力の危機が起きた
- 金本位制の放棄とドル切り下げ
- 今とよく似た双子の赤字
- いま、世界は「油断」しているから怖い
- もし、世界がつながらなくなったら
- 米中軍事衝突の危険は、世界で公知の事実
- 台湾で全面衝突の影響シミュレーション
- 「米中経済同盟」を結んでしまった米国
- 日本に負けた80年代までの米中
- 「戦略的建設的パートナー」だった米中
- 中国に国債購入を依存し始めた米国
- 米中はお互いにトロイの木馬になる
- トランプ大統領の登場は必然だった
- 米中衝突で米国の代表企業に壊滅的打撃
- 米中台湾のサプライチェーンが断絶
- インフレと高金利が呼ぶ巨大暴落
- 中国の打撃は米国より小さい
- 対中金融制裁発動で米経済と金融に大打撃
- 米国襲うモノ不足・インフレ・社会不安
- コロナが見せつけた米中「社会制御力」差
- 米中対立に解決策はあるのか
- 「戦争と平和」そして、歴史問題
「米国の株式市場は、世界中のあらゆる情報、特にリスクとリターンに影響を与える情報を織り込んでいる」「情報において完全である」とよく主張される。
虚構である。
米国に限らず、世界中に、リスクとリターンに影響する情報を完全に織り込むマーケットはない。
それどころか、「自分に都合のいい情報しか取り上げない」のが古今東西の金融市場の一般的な法則性だ。いま、それが米国で顕著だ。
戦争とインフレのリスク
この21世紀型大恐慌シリーズでは過去4回にわたり、米国の株、国債、通貨ドルが、大暴落の連鎖を起こす必然性について説明してきた。
しかし、そこでは、現在のリアルな重大リスクを説明しなかった。
それは、以下の2点である。
①国際紛争と戦争のリスク
②それに伴う世界的なサプライチェーンの遮断と供給の途絶が生む急激なインフレ
具体的には、台湾をめぐる米中衝突のリスクだ。
石油ショックとインフレは戦争が起こした
歴史的な実例があるから、比較しつつ説明する。
1970年代の2回の石油ショックである。石油ショックで生まれたインフレは、米国で、高金利→景気後退→株式下落→国債消化困難、を招いた。
インフレと不況(スタグネーション)が併存する「スタグフレーション」という言葉が生まれた。歴史をさかのぼろう。
1973年の第4次中東戦争とOPEC(石油輸出国機構)の結成、1979年からのイランイラク戦争、この2つの戦争を契機として、石油のサプライチェーンが途絶する、という恐怖に世界はとらわれた。
しかし、実際には、石油のサプライチェーンは途絶しなかった。
「イスラエルを支持する国には石油を売らない」と日米欧諸国を脅かしたOPEC産油国は、現実には石油を売り続けて巨大なオイルダラーを溜めこみ、「オイルマネー」が誕生した。