為替ヘッジは、実は円安に弱い?
さて、為替ヘッジにより、為替リスクは「ある程度」はかわせるのですが、為替ヘッジは、実は円安に弱いのではないかと、筆者は考えています。
なぜでしょうか?
もし外国通貨の金利が高くなり、円貨の金利が変わらなければ……。外国通貨の金利と円貨の金利の差が大きくなればなるほど、外国通貨の方が高くなる、つまり円安が進行すると、一般的には考えられているからです。
先ほどのヘッジコストの話を思い出してください。
外国通貨の金利と円貨の金利の差が、ヘッジコストです。
つまり、外国通貨の金利と円貨の金利の差が大きくなるということは、ヘッジコストも大きくなってしまう、ということです。
外国通貨の金利が高くなり、円安が進む状況では、このヘッジコストが大きくなるのに加えて、為替ヘッジによって為替差益を得るチャンスを逃します。
どういうことでしょうか?
外国通貨の金利が高くなり、円貨の金利が変わらなければ、円安が進行する傾向にあるのは先述の通りです。
為替差益を得ることができる円安の進行も、為替リスクです(本稿の最初の方で述べています)。
そもそも為替ヘッジの目的は為替リスクをかわすことです。
円安が進行すれば、本来なら為替差益を得ることができるはずなのですが、為替リスクをかわす為替ヘッジを行っている以上、為替差益を得ることはできません。
つまり、円安が進行する状況において、為替ヘッジを行っていると、ヘッジコストが大きくなるのに加えて、為替差益を得る機会をも逃してしまうのです。
なお、円高が進行する状況にあっては、逆の傾向にあります。
外国通貨の金利が低くなり、円貨の金利が変わらなければ、ヘッジコストは低くなり、また為替も円高が進行する傾向にあります。
もし、為替ヘッジがあるのでしたら、ヘッジコストが低くなり、為替差損を「ある程度」かわすことができそうです。
つまり、為替ヘッジは投資時に比べて円高が進む傾向にあるときに、円安の場合と比べて強みを発揮することができそうです。
長期投資で「為替ヘッジあり」を選ぶべきか?
最後に、長期投資において、為替ヘッジありのコースを選ぶべきか否かという点について考えてみます。
「そもそも日本は経済成長の見込みがないから、外国の資産に投資をする。外国の方が経済成長が見込まれるから、将来は外国の通貨が高くなり、円貨は安くなる」
確かに説得力がありますね。
しかし、まずは以下をご覧ください。
本稿執筆時点(2021年3月7日)では、
日経平均 28864.32円(3月5日終値)
為替 1ドル=108.34円
10年前の2011年3月7日では、
日経平均 10505.02円
為替 1ドル=82.21円
10年前の方が26円も円貨が高かったのですが、今と比べ、日本の経済は成長していたのでしょうか?と問われると、大いに疑問を感じますね。
為替は、通貨に対する需要と供給で変動しますので、なかなかに分かりにくいです。先述の10年前との比較からも、経済状態と通貨の価値は必ずしも一致しないことがいえそうです。
しかし、外国通貨の金利が高くなって、円貨の金利が低くなれば、一般的には金利の高い通貨の需要が高まる傾向にはあるようです。
株価も需要と供給で変動しますが、為替の方が、もっと分かりにくいかもしれません。
筆者は為替差損を覚悟しつつも、為替差益を得る機会を逃したくありません。
ですので、筆者が保有する投資信託は、1本を除いて、全て「為替ヘッジなし」です。
しかし、投資経験の浅い方には、やはり外国資産を対象とした投資には、ハードルの高さを感じてしまうかもしれませんね。
では、一体、どこに投資をすれば良いのか?
次稿では、日本株式への投資を考えてみます。