北朝鮮の工作員にとって文在寅政権はありがたい存在だ(写真は南北の境界線)

抜け穴だらけの軍事境界線

 北朝鮮(以後、北)の人民が2021年2月16日、潜水服と足ひれを着用し、海から越境して、韓国東海岸に上陸した。

 韓国では、北の工作員などが海から上陸する恐れがある地区には、侵入を防止するための頑丈な鉄柵が張り巡らされている。にもかかわらず、脱北者は、障害が壊れている排水溝を見つけ、通り抜けて韓国に入った。

 酷寒の海を泳いで南北の境界を越え、上陸後、排水溝を抜けて韓国に入る行動は、漁民ができることではない。特別に訓練された者としか考えられない。

 海岸の監視所には、海岸レーダー、海岸複合監視カメラおよび赤外線戦場監視システムなどが重層的に設置されている。

 侵入者はその監視カメラに10回も撮られていたが、見逃され、侵入を未然に防止できなかった。韓国側の監視は、任務を怠っていたということだ。

 かつて、旧日本軍の大陸での戦いや米軍のベトナム戦争でも、監視兵が眠ってしまったために部隊が襲撃を受け、全滅させられたこともあった。

 監視は、下級兵士に任されるものだが、奇襲攻撃などの警告を発出するためには、絶対に疎かにされてはいけないものだ。

 2020年11月にも、同様の「越柵越南」事件も発生していた。

 侵入ではなく、韓国からの逃亡事件もあった。2020年7月、以前、脱北してきた者が、南北軍事境界線を流れる川を泳いで、北朝鮮に戻った。

 このケースも、排水溝を通り抜け、漢江を泳いで北朝鮮に渡って開城に戻った模様だ。排水溝を抜けるのにたったの12分しかかかっていないという。

 韓国の監視カメラや熱探知装置に7回も検知されていたのに、逃亡を未然に防止することはできなかった。

 2018年にも、脱北者が軍事境界線付近の鉄原から北朝鮮に戻ろうとして警察に拘束されたことがあった。

 民間人が、夜間に警戒厳重な鉄柵の下にある排水溝を、それも通過可能な排水溝を見つけて通過し、河川に出て、泳いで渡ることはできない。