これは地方の小さな「弁当屋」を大手コンビニチェーンに弁当を供給する一大産業に育てた男の物語である。登場人物は仮名だが、ストーリーは事実に基づいている(毎週月曜日連載中)

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平成22年:63歳

「自分の葬儀に誰が来てくれるのか…香典をどれくらい包んでくれるのか…棺桶の蓋をそっと開けて覗いてみたい」

 ダイナーウイングの創業者である恭平の父は生前、不謹慎な言葉を度々口にしていた。

「享年96歳の長寿のお陰で、参列者に父の知人が少なかったのは致し方ない」

 恭平はそう呟き、妻の淳子は義母を追いかけ旅立った義父の仏前に手を合わせ呟いた。

「お義父さん、天晴れ!」

 シャイなくせに自己顕示欲が強く、その実、意外に真摯で律義者の似た者親子。

 幼少の頃から恭平は、僕は、「鳶が鷹を生んだ」と言われるようになる!と広言を吐き、ライバルと目する父を凌駕すべく奮励努力していたが、矢継ぎ早に両親を亡くして顧みれば、所詮「蛙の子は、蛙」であったと天を仰ぎ自嘲した。