混乱を極めた東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長人事は、最終的に橋本聖子前五輪相の起用で決着した。世論調査では橋本氏に高い期待が集まり、森喜朗前会長からの交代劇はひとまず奏功したと言える。
ただ、今後は外国人観客の受け入れの是非など、過去にない難題への調整が待っている。橋本氏には森氏のような強い政治力はない。単なる「お飾り」に終われば、大会は今度こそ息の根が止まるだろう。
世論に好意的に受け入れられた「橋本会長」
「1月のコロナの状況により、今年の大会開催を不安に思う方も増えているのではないか。加えて今回、新会長を選ばざるを得なくなった一連の経緯は、さらに国民、都民の気持ちを困惑させるものだった。丁寧な説明を心がけ、組織委に対する信頼回復に努めたい」
橋本氏は2月18日夕の会長就任会見で、「信頼」という言葉を多用しながら「国民のみなさんに歓迎される東京大会」を目指す考えを切々と訴えた。
女性蔑視とも取れる発言をした森氏の“上から目線”に対し、橋本氏は腰を低くして説明責任を尽くそうとする姿勢が目立つ。
ある組織委幹部は、「就任会見では自分の言葉で丁寧に語っていた。世の中の印象は変わるのではないか。紆余曲折があったが、橋本氏に交代してよかった。結果オーライだ」と胸をなでおろした。
実際、橋本会長の就任は、世論に好意的に受け入れられたようだ。
産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が2月20、21両日に行った世論調査では、橋本氏が新会長に「ふさわしい」との回答が73.2%にのぼった。
また、今夏開催の是非に関する設問では、「感染対策を徹底して予定通り開催できると思う」との回答が28.0%で、前回の1月調査から12.5ポイントも増えた。
首相に近い官邸関係者は、「女性で低姿勢、何よりアスリートの気持ちを代弁できる橋本氏に代わった効果が大きかった。五輪に対する厳しい世論は消えないが、悪い流れをせき止めることはできた」と安堵の表情を浮かべる。
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