加えて、新型コロナウイルスの感染が拡大したことをきっかけに、各国は景気対策も兼ねて、脱炭素インフラへの投資を加速させている。欧州連合(EU)は10年間で1兆ユーロ(約126兆円)というプランを発表しているし、米バイデン政権は、なんと4年間で2兆ドル(約200兆円)もの金額を脱炭素に投じる計画である。中国も脱炭素を含む次世代インフラに170兆円を投じる計画が報道されている。
本来であれば、5年もしくは10年かけて進めるはずだった脱炭素シフトが、コロナ危機をきっかけに数年という時間軸に変貌しており、こうしたマクロ的な状況の変化が、あちこちに混乱を引き起こしている。
だが、脱炭素シフトは避けることができない流れであり、良い悪いの議論とは関係なく、この流れはもはや止めることはできない。
残念なことに日本は先進諸外国の中では、脱炭素シフトへの準備がもっとも進んでおらず、エネルギーシフトに伴う構造転換ショックへの耐性が弱い。トラブルが発生するたびに冷静さを失った議論をすれば、ますます世界の潮流から取り残されてしまう。
今回のLNG価格高騰問題は、今後、脱炭素シフトに伴って発生する各種混乱の前哨戦と考えた方がよく、この戦いに勝ち抜くことができた国だけが次世代における覇権を確立できる。世界各国は、脱炭素シフトに対してコロナ危機と同じレベルの臨戦態勢で臨んでいるが、日本も同等かそれ以上の体制で問題に対処していく必要がある。