「1on1」で注意すべき点とは

 1on1をより効果的に行うために、実施の前に注意点を理解しておきたい。1on1を行う際には、次の5つのポイントに注意しよう。

●まず部下の話に耳を傾ける
「1on1」で何よりも大切なのが対話だ。これまでの習慣でつい高圧的な態度になってしまったり、相手の話を聞かずに話を進めたりするのは避けたい。1on1はあくまでも部下のために行うものである。ミーティングのほとんどを部下の話を聞く時間にあて、必要があればタイミングを見計らって質問しよう。

●相手の目を見て話しを聞く
 せっかく「1on1」の場を設けているのにもかかわらず、横柄な態度では信頼関係は築けないだろう。部下は今どのような感情で話をしているのか、しっかり相手の目を見て理解しようとする姿勢が大切なのだ。目を見て話しを聞いてもらえれば、部下も「自分の話を聞いてくれている」と実感できる。

●業績向上につながる話をする
「1on1」ミーティングは、部下の成長によって会社の業績を向上させるために行うものだ。リラックスした雰囲気を保つためには業務に関係のない話も時には必要だが、最終的には業績の向上につながる会話を意識する必要がある。短時間とはいえ、業務時間内に行うミーティングであることを念頭に置きたい。

●お互いメモを取る
 何を話し、どのような成果があったのか、ミーティングごとにメモを取っておけばいつでも過去のミーティングを振り返り業務に活かすことができる。メモを取ることで、ミーティングに集中できるのもメリットだ。メモを共有すれば、密室内で行われるミーティングの透明性も保てる。

●キャンセルではなくリスケをする
 ミーティングのセッティングをしても、急な仕事で実施が難しい場合もある。そのようなときは、ミーティングを取りやめるのではなく必ずリスケジュールしよう。

「今日の○時のミーティングが難しくなってしまいました。代わりに〇日の○時はいかがでしょう」と提案することで、1on1を重要視している、部下との時間を大切にしていることを行動で示せる。

気になる「1on1」の企業事例を紹介

「1on1」は実際にどのようにして行われているのだろうか。国内で1on1を実施している2社の事例を紹介する。

●ヤフー
 国内企業で「1on1」ミーティングを実施している企業として有名なのがヤフーだ。ヤフーは社員の才能と情熱を解き放つことを目的として1on1を実施している。実施は、業務時間内にそのような時間を取るのは難しい、部下の愚痴を聞くだけで終わるのではないかという懸念の声も上がったそうだ。

 ヤフーでは、目的を明確化し、社員や経営層に1on1によって何がもたらされるのかを伝えたうえで1on1を導入・実施した。さらに外部の専門家にも協力を仰ぎ、ヤフーに合うカリキュラムになるようブラッシュアップを続けたという。

 管理職側のミーティングのスキルアップを図りながら、社員一人ひとりと1on1ミーティングを実施しているのも特徴だ。上司が苦手意識を持つ部下に対しても同様にミーティングを実施することで、対話を通して苦手意識を取り去り、信頼関係を構築できる。ミーティングで得た情報は、部下が能力を発揮できる業務へのアサインやマネジメントに有効活用できる。

●クックパッド
 レシピサイトを運営するクックパッドも「定期個人面談」として「1on1」を実施している。クックパッドは2~3名で1つのチームを作って業務を行っており、各々が自分の仕事に注力するスタイルだったという。個人それぞれが自分の仕事を行うことは得意だが、チームプレーは難しい。そのような状況を打破し、チーム力を高めるためにも定期個人面談をはじめたという。

 定期個人面談の実施によって、マネージャーはメンバーについて深く知ることができ、潜在的な課題を発見し対処できるようになったそうだ。30分程度の1on1は定期的に行われる。実施する際はメンバーがリラックスできるよう、ランチをしながら、散歩をしながらなど、場所・形式にはこだわらない。時にはネガティブなフィードバックを行うこともあるが、基本的に評価の話はしないのが特徴だ。

 人材の定着を図り、個々のスキルアップを目指すために、人事評価面談のような形式ではなく「1on1」を実施する企業も徐々に増えている。上司と部下が円滑なコミュニケーションのもと業務を進められるようになれば、生産性の向上、ひいては業績の向上も見込めるだろう。自社にある人材の活躍を後押しする1on1。社内のコミュニケーションに課題を抱えているのなら、導入を前向きに検討してはいかがだろうか。

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HRプロ編集部

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