蓄電池は災害時の非常用電源としても有望
さらに蓄電池があれば災害時の非常用電源としても使えます。本来は負荷を平準化する目的で導入した蓄電池を非常用電源として用いることは十分に可能です。蓄電システムとして日々運転されているので、非常時に残量がゼロになっているという心配もなく、安定して起動することができます。
最近は台風の発生が大きな災害につながるケースがあり、停電による瞬時電圧低下は現在でも避けられない事態です。
停電は多くの場合、送配電線への落雷によって遮断機が正常に動作した場合に起きやすく、蛍光灯のちらつきのようなごく短い時間内の電圧の低下でも、精密機器や半導体製造装置などデリケートな製造機械には大きな影響が生じる恐れがあります。そこで瞬時電圧低下対策を施した蓄電池を導入して、電力の品質維持を図る事業者も増えています。
電力の需要予測は専門家でも非常にむずかしいものです。需要は直接制御できるものではないために、需給バランスの調整はこれまでは主に供給を担う発電側で制御していました。再生可能エネルギーの比率が高くなるにつれて気象条件に大きく左右されるため、供給側の再生可能エネルギーの出力予測がこれまでにも増して重要になっています。ここにも蓄電池の必要性が生じています。
実用されている蓄電池にはどんなものがある?
実用されている蓄電池を挙げて、その特徴を概観してみます。
(1)鉛蓄電池
鉛蓄電池は、正極材に二酸化鉛、負極材に海綿状の鉛、電解液に希硝酸を使用した電池です。ガソリンエンジン車の始動用バッテリーやフォークリフト、ゴルフカート、車いすなど、電動車用に実用化の歴史の長い、使いやすい2次電池(何度も充放電が可能な電池)として知られています。
特徴としては、大電流での放電や長時間にわたる緩慢な放電を行うことができ、変化の激しい使い方でも安定した性能が発揮されます。電極の材料も安価で、調達が容易なこと、安全性、信頼性、リサイクル性の高さから、2次電池の中では生産量が最も多く、安定した評価を得ています。
欠点としては、電極に鉛を使用しているために重量が重くなること、電解液に希硝酸を使用しているために破壊した時に危険であること、などが挙げられます。
1859年にフランスのガストン・プランテによって発明されました。最初の鉛蓄電池は、布で絶縁した2枚の鉛板を巻き付けて、希硝酸の容器に浸した構造でした。正極の二酸化鉛が反応して、負極に電子が非常に多い状態となり電気を貯めるという仕組みです。
1880年にフランスのカミュ・フォールによってペースト式極板電池が発明され、さらに鉛-アンチモン合金格子が出現したことから量産化が容易になり、ここから本格的に普及してゆきました。
日本では1895年に島津源蔵氏によって初めて試作され、19世紀末から20世紀初頭にかけて大容量の蓄電池として用いられるようになりました。
1950年代以降はモータリゼーションに伴って自動車用電池の需要が急増し、1970年代には不織布に硝酸を含ませて保持する密閉式シール鉛蓄電池が開発されると、様々なポータブル電子機器にも採用されるようになりました。
通常の鉛蓄電池は電解液が液体のため、横に倒して置くことができません。その欠点を解消したのが小型の密閉式シール鉛蓄電池です。これによって二輪車や据置用電池として急速に普及していきました。現在も大容量の2次電池の主流となっています。
鉛蓄電池の単電池当たりの電圧は2Vで、自動車用には電池ケースの中で単セルが並列につながれて12Vや24Vとして用いられます。
正極の構造によって、ペースト式とクラッド式に分かれ、ペースト式は電極を格子状に並べて、二酸化鉛と硝酸鉛を混ぜたペーストを塗り込んだ電池です。クラッド式はガラス繊維などの織物で包んだ二酸化鉛の棒を並べた構造で、安定性、信頼性をより高めています。
鉛蓄電池は発明されてから150年が経過しており、すでに研究されつくされた電池と思われがちですが、いまだ解明されていない部分も少なくなく、現在でも性能の向上が図られています。
長時間の使用、高いエネルギー密度、長寿命化が一段と図られ、リサイクル性にも秀でていることから循環型社会にも適しています。電力貯蔵分野においては今後も大きな役割を担うものとしてますます期待されています。