社内での将来に不安を抱く40代、50代は少なくない(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

(森琢也:中小企業診断士、キャリアコンサルタント)

 コロナ禍の中、新しいことに挑戦するのは簡単ではない。キャリアと経験を積んだ40代、50代のビジネスパーソンであればなおさらだろう。年とともに変化を恐れ、嫌うのは当然のことだ。だが、保守化していく自分自身を変えることは可能だ。今回は惰性の海を抜け出した緑川賢一郎氏(仮名)の話。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、1年前とは生活や仕事、さらには価値観まで変化したといわれます。その中で、この変化を脅威と捉えるか、好機と捉えるか、読者の皆様はどちらでしょうか。いずれであれ、今の私たちが「変化の中での対応力」を問われていることは間違いありません。

 一方で、人間は年齢を重ねるごとに変化対応が難しくなるという側面もあります。40-50代のビジネスパーソンの中には、「自分が保守的になった」という実感を持つ方も多いのではないでしょうか。それはデータにも表れており、内閣府発表調査結果を見ると、下図のような世代別の傾向が見えてきます。

『何らかの挑戦・取組をしたと回答した者の割合(年齢別)』 (内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)『新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』(2020年6月21日発表)のデータを筆者がグラフ化した)

 この調査結果を見ると、年齢を重ねるにつれて新しい挑戦や取り組みができなくなる傾向がはっきりと見て取れます。以前から、企業の中途採用担当者の中で、「シニア世代を積極活用したいけれど、学ぶ意欲や自分を変えていこうという姿勢が乏しく、なかなか採用できない」という声をポツリポツリと耳にしていました。やはり全体傾向としてみると、そういった見方や印象は否定できないのかもしれません。

 筆者は、経営コンサルタントとして事業承継やスモールM&A、企業研修・資格予備校講師の仕事をしつつ、悩めるビジネスパーソンにビジネスコーチングを実施しています。過去には、リクルートの研修講師採用プロジェクトに携わり、約8000人近いハイクラス層(年収1000万円以上)を募集・選考してきました。

 そういった経験を踏まえ、30-50代ビジネスパーソンの方々が同じように抱えている課題や悩み、迷いについて、実際のクライアントの方々とのエピソード・支援事例をもとに、読者の方々にも役立つヒントとして少しでもご提供できたらと思います。

 それでは、40代ビジネスパーソンが“優秀すぎる脳”に対抗して、チャレンジ精神を取り戻したのか、実例を見ていきましょう。