(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
コロナ禍後、失業率は上昇したものの、リーマン・ショック後に比べれば上昇幅が抑制されている。リーマン・ショックのあった2008年9月に4.0%だった失業率は、10カ月後の2009年7月に5.5%へ大きく上昇した。対して、コロナ禍が始まった2020年1月の失業率は2.4%だったが、10カ月後の同年11月時点で2.9%だ。コロナ禍後は、失業率の水準が低いだけではなく、上昇幅も相対的に小さい。
求職理由別の失業者数動向を比較すると、コロナ禍後では勤め先・事業の都合で離職した者、いわゆるリストラによる離職者の増加幅が相対的に小さい。リーマン・ショック後と比べ、コロナ禍後に企業によるリストラの動きが緩やかとなっている背景としては、(1)リストラせずとも労働者が自主的に仕事を諦める動きが生じたため、および(2)雇用調整助成金の恩恵で企業が雇用を維持できたため、という2つの理由が考えられる。