(取材・文:松原 孝臣 撮影:積 紫乃)
フィギュアスケートにおいて重要な役割を担う振付師。ジャンプなどの技術の難易度が上がる中、どのように振付し、芸術性を加えていくのか? 数々のトップスケーターの振付を担当する宮本賢二さんに、振付の作り方や教え方、振付師になったばかりの頃や選手との思い出など、貴重な話をうかがいました。
選手がよりよく見えるように
フィギュアスケートにおいて、重要な役割を果たしている人がいる。「振付師」である。
フィギュアスケートは、まず何かしらの曲が前提としてあり、その上で選手は演技する。曲に合わせてどのような動作をするのか、世界観を築くのか、そのために振付師は欠かせない。
ただ、動作を振り付ければいいわけではない。
「規定のジャンプやスピン、ステップなどがありますが、それを曲と合わせて踊るようにつなげるのが振付師の仕事です。ただ走って跳んで、というわけではありません。エキシビションのナンバーなら、やりたいようにやるのはかまいませんが、試合のプログラムは別です。点数を獲ることを考えなければいけません」
そう語るのは、宮本賢二である。有数の振付師として数多くの振り付けを担い、スケーターを支えてきた。
これまでに手掛けた選手の名前をあげれば枚挙にいとまがない。2010年バンクーバーオリンピックで銅メダルを獲得した髙橋大輔のショートプログラム『eye』をはじめ、羽生結弦のエキシビジョン、最近では宇野昌磨など、 フィギュアスケートファンでなくても名を知るトップスケーターばかりではなく、幅広い年代の、たくさんの選手のプログラムを支えてきた。今シーズンも数々のスケーターのプログラムを振り付けた。
2020年12月、全日本選手権のエキシビジョンにあたる「オールジャパン メダリスト・オン・アイス2020」で『Oboe Concerto』を披露する宇野昌磨。振付は宮本賢二。写真=西村尚己/アフロスポーツ
宮本が語るように、フィギュアスケートは、ショートプログラムならジャンプ3回、スピン3回、ステップ1回とエレメンツ(技術要素)の回数が決まっている。スピンやステップなら「レベル」があり、ルールに基づき、どのように行なったかでレベルが変わってくる。それが点数にも影響する。
これらルール面を考慮しつつ、要素をあてはめなければならない。そのうえで、プログラムを通じての表現や世界観を構築していく役割を果たしている。
「いちばん大切にしているポイントは、その選手がものすごくきれいに見えたり強く見えたり、よりよくなるように、ということです」
