2020年11月、NHK杯のエキシビジョンで演技する村元哉中・髙橋大輔組。写真:西村尚己/アフロスポーツ
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(取材・文:松原 孝臣 撮影:積 紫乃)

コロナ禍での試合開催「みんなに感謝」

 新型コロナウイルス感染拡大は、社会全体に大きな影響を及ぼした。フィギュアスケートもまた、その影響を免れなかった。緊急事態宣言が発出すると、各地のリンクは閉鎖され、氷上への練習はストップした。

 そんな中、宮本は、

「どこにも行かず、早朝に走って体力づくりをして、次に振り付けがあるときに動けるようにしていました」

 宣言が解除され、振り付けに出向くようになった。

「できるだけ新幹線や飛行機に乗らず、自分の車で動いていました」

 そして「例えば」、と続ける。

「東京から岡山に行ったときは、休憩を挟んで10時間くらいかかりました。けっこうしんどかったです。いちばんは『この距離を帰るのか』と思ったときがしんどかった」

 楽しい話をするような笑顔を見せた後、こう語る。

「みんなが『うつさない、うつらない』を実行していたじゃないですか。選手のためでもあるし、もちろん自分のためでもありますから」

 リモートでの振り付けによって行なうケースも見られたが、宮本はしなかった。

「一度チャレンジしてみたけど、やっぱり細かなニュアンスを伝えるのが難しかったですね」

 だから移動がしんどくても、現場に赴くことにこだわった。

 コロナ禍にあっても、シーズンは開幕し、大会が始まった。宮本は選手に何度も伝えた。

「『知らないところでいろいろな人が携わって、力を注いで試合ができているのだから感謝しようね』と言ってきました」

 大会での光景が心に残っているという。

「観客の方々が声を出さず、拍手だけにおさえていたじゃないですか。フィギュアスケートを観る人は、ほんとうにマナーがいいなと思いました。それでもあれだけ、盛り上がったのも素晴らしいなと思います」