3.韓国海軍の空母保有
韓国軍参謀本部によれば、2030年代初期までに空母の実戦配備を終える計画だという。この空母には、垂直離陸が可能な「F-35B」ステルス戦闘機20機が搭載される。
兵器を保有することは、特に空母となれば、極めて高価な買い物になる。そのため、国家の防衛戦略に基づいて、必要とする兵器を購入、あるいは建造するのが通常だ。
では、韓国では、北が南侵してきた時に、空母が役に立つのか。
韓国軍当局の話(中央日報)によれば、これらを保有する理由は、周辺国(当然、日本)や北の脅威に対処するためだという。
特に、韓国軍が北の短距離弾道ミサイルや超大型多連装ロケット弾によって、韓国国内にある在韓米軍や韓国空軍の基地や滑走路が破壊される可能性があり、その被害を受けないために、空母がいったん領土を離れ、北のミサイルなどの攻撃を避けて、日本海や黄海の自国の経済水域に避難し、韓国戦闘機を残存させ、反撃の手段として用いるためだということだ。
私は、これらが「北の南侵を阻止するための防勢兵器というより攻勢的で外洋で作戦する兵器である」と、『軍事費は日本以上、攻撃的軍拡に舵切った韓国』(JBpress)で述べた。
韓国が、この空母を半島有事の際に運用すると言うのなら、どこに展開し運用するというのか。
この場合、空母の活動範囲は、日本海、黄海、東シナ海、そして対馬海峡になる。
だが、この海域は、韓国と日本、日本と中国、韓国と中国の排他的経済水域が重なり合うところがあり、軍艦が自由に航海できるのは基本原則として中間線までと考えていい。
つまり、活動範囲が極めて狭いのだ。韓国海軍空母が活動できる範囲はかなり制限されている。
したがって、半島有事での行動範囲は日本海、黄海、対馬海峡に限定される。そして、ここには、中国と韓国、日本と韓国の排他的経済水域(EEZ)が設定されている。
EEZには沿岸国の主権が及ばないものとの認識があるが、海洋資源などに関して一定の範囲の主権的権利と管轄権が及ぶことから、公海自由の原則が100%当てはまるものではない。
EEZにおいて、他国が自由に入って、公海と同じように、激しい戦闘を行うことは、沿岸国としても認められないだろう。
現実に、他国のEEZに入って、大々的な演習を行ったということは、記憶にない。
韓国は、中国と同盟関係にはない、日本ともだ。
国際法では、空母が戦闘するための活動範囲は、自国の排他的経済水域と公海で、完全に自由だ。
だが、空母が中国や日本の排他的経済水域に入って艦上機を発進させ、北を攻撃したり、北が対艦ミサイルを撃ち込んできたり、さらに機雷を敷設したりする交戦行為には制限があるのではないか。
他国の排他的経済水域を起点にして、攻撃行動を取ることにより、南北の戦闘が行われることは、日本としても容認できるものではないであろう。