小さな八百屋さんの猫は、店先から家の中へと移動し、隠れているだろうか。日が暮れてごうごうと聞こえてくるますます大きな音に、怖さを感じました。
次の日は、うってかわって好天で、日はさんさんと照り、無風です。どの家も、窓を大きく開け、掃除をしていました。
「昨日の嵐はすごかったですね」とカフェで一休みしながら主人に話しかけると、「世界一の春の嵐さ」と、なぜか自慢そうです。トリニダーの春の嵐は、春の訪れを告げるホイッスルでもあるから、観光業に携わる者にとっては一種の縁起物だと話してくれました。
冬の間は閉じているレストランも、開店の準備をはじめます。店の前に、神妙な面持ちで猫がたたずんでいました。
■お知らせ■
新美敬子さんの新刊『猫のハローワーク2』(講談社文庫)が2021年1月15日に発売されました。キューバの猫も「アンテナ調整係」と「おばあちゃんの店の見守り」として登場しますよ!
既刊の『猫のハローワーク』とあわせてお楽しみください。