ブリジット・バルドー、石原裕次郎、灰谷健次郎、ジョルジオ・アルマーニ、山田太一、ソフィア・ローレン・・・。既に鬼籍に入った人も、歴史上の偉人のように思われている人もいるが、皆この著者と同じ1934年生まれである。小学5年生で終戦を迎え、戦後から高度成長期、バブル崩壊──と、昭和から平成、令和の時代まで。今なお世の中への興味が次から次へとあふれ、当事者の本音を知りたい、真実を伝えたいという思いは尽きることがない。
現在86歳だが、90歳まで現役のジャーナリストとして生きると語る著者が、少子高齢化時代の働き方やシニア世代の生き方、病や老いとの付き合い方、理想の最期に加えて、テレビ局を辞めた理由や夢中になってつくってきた「あぶない」番組の裏側、現在の日本の政治とメディアについてなど縦横無尽に語る。『90歳まで働く 超長生き時代の理想の働き方とは?』(クロスメディア・パブリッシング<インプレス>)を9月18日に上梓した田原総一朗(たはら・そういちろう)さんに話を聞いた。(聞き手:長野光 シード・プランニング研究員)
逮捕されてもオンエアしたテレビ東京
──岩波映画製作所時代に手がけた「楽しい科学」という子供向けテレビ番組では、クビを覚悟で自己流の大胆な編集をしたところ結果的に評価されました。「サンデープロジェクト」では、靖国神社についての発言が元で自宅に街宣車が押し寄せましたが、「右翼200団体の代表VS私」という討論会を開催。右翼団体から「有意義な意見交換ができた」と一目置かれています。本書には、田原さんを象徴するようなエピソードが随所に描かれていますね。
田原総一朗氏(以下、田原):映画会社では、企画から映画化するまで、企画書を10回、20回書き直すのが当たり前でした。でもある時、たまたまテレビ朝日(当時は日本教育テレビ)のディレクターに幼児向けの番組(「トッポちゃん」)の構成を頼まれた。それで思いつくままに話したら、「それでいきましょう。今晩原稿書いてください」と言われた。「いつオンエアですか」と聞いたら「明後日です」って。「思いついたアイデアを今晩書いたら明後日オンエアするなんて、こんないい加減な世界があるのか。それだったら何でもできる、面白い」と思ってテレビの世界に入ろうと思いました。
ちょうどテレビ東京(当時は東京12チャンネル)が開局(1964年4月)前の時期で、人材を募集していたので応募しました。当時、テレビ東京は完全に三流局で「テレビ番外地」と言われていた。誰も相手にしてくれないし、番組制作費は他局の3分の1以下だったよ。これがまたよかったんだよね。
制作費がない中で、日本テレビやTBS、NHKができない番組とはどういう番組か。結局はあぶない番組だよね。やったら警察に捕まるような番組、過激な番組ね。だから、他局がつくれないようなやばい番組ばかりつくったよ。2度逮捕されたけどね。テレビ東京ってすごくいい会社で、上の方の人もまともなものつくっても相手にされないって分かっているから、そういうやばい番組をつくるのを許してくれた。逮捕されてもオンエアもしてくれる。面白かったですよ。