バイデン政権の誕生は尖閣を失うことと同義

 米大統領選は、8000万票を獲得したバイデン候補が勝ったとの見方が今も主流だ。同候補は政権移行チームを立ち上げ、新閣僚などの名前も公表し始めた。日本政府も菅首相が祝電を打ち、2021年の就任式を経て2月以降に最初の首脳会談をセットするとしている。

 2016年の大統領選の際に、クリントン候補の勝利を予想した安倍前首相が選挙中の彼女のもとを訪問したことは記憶に新しい。今回もまた、米国内の選挙結果を巡る混乱をよそに、バイデン候補勝利を歓迎した動きを見せている。日本メディアも一斉にその流れに沿っている。

 ワシントンの日本大使館に近い韓国系米国人は、「日本が待ち望んだ民主党の大統領候補が誕生したことはいいことだ」という大使館関係者の言葉を聞いたと語っていた。

 もっとも、バイデン候補は、副大統領時代から中国と密接に関係している。息子のハンター氏についても、9月からの2カ月間、父親を含めた中国との不正疑惑の噂が出たほどだ。また、韓国寄りで、安倍首相の靖国参拝を事前には牽制して事後には激怒したという過去もある。

 そのバイデン氏が大統領になることを日本政府が望んだということは、当然の帰結として、日中間で問題が起きた時に、中国側に有利に運ぶ政権が米国にできることを望んだということである。

 尖閣問題はその代表例であるが、恐らくバイデン政権では形の上での議論はあったとしても、時間とともに日本があきらめることを望むというような動きになることが予想される。

中国の尖閣領有は米国にとっても日本防衛コストの削減につながる(写真:ロイター/アフロ)
中間選挙に向けて景気回復が至上命題のバイデン政権。そのためには中国の協力が不可欠である(写真:ロイター/アフロ)

 2022年の中間選挙までに景気回復を本格化しなければならない新政権にとって、そのための努力は何でもするはずだ。その際の、手っ取り早い対応は対中国向け輸出の増加である。その実現のためにならば、尖閣などは気にもかけないだろう。それが、バイデン政権のやることだと覚悟しておいた方がいい。