49歳までトッププレイヤーとして活躍し、その一方でプロクラブを立ち上げ経営をやりくりしたーーその生々しい半生を記した折茂武彦の『99%が後悔でも。』。
「心が震えた」と評するのはベストセラー『ホームレス中学生』の作家であり、漫才コンビ・麒麟の田村裕氏だ。バスケットボール好きでも有名な田村氏が本書で見た、ビジネスパーソン、プロアスリートそして生き方。
2冊購入していた「折茂本」
まずは僕の様な若輩者が人生の大先輩であり、バスケットボール界のキングオブレジェンドの折茂さんの著書に書評を書かせて頂くという恐れ多すぎる依頼のメールを見たときに一度携帯を伏せて置いて・・・数日経ってからお返事したことをご理解頂きたい。
そして恐れ多すぎてパニックになり断った方が良いのかなとも数日考えたのですが、この本を既にAmazonで2冊購入していた(大ファン故に保存用と読む用で2冊購入してました、とかだと美談になるのですがただの発注ミスで2冊届きました)僕にとって、感動だけではなくこの本から感じた尊敬や苦しすぎる過去、知られざる真実、同じ男としての憧れ、色んな思いが合わさって起きた心の振動。
これを伝えさせてもらえる場があるのは有り難い、恐れ多いけれど、ボキャブラリーが無いなりに、それをほんの一片でも担わせて頂けるならやらせていただこう。読み終えて得たばかりの概念をさっそく使って申し訳ありませんが書き切らせて頂こうと思った次第であります。少しでも多くの方々にこの本の素晴らしさが伝われば幸いです。
まず、この本は大きく分けると3つの要素があるように思います。
折茂さんの思い出と共に振り返る日本バスケットボール界の歴史と日本バスケットボール界への思い。日本バスケットボール界の歴史を語るナビゲーターにレジェンド折茂武彦さんなんて贅沢すぎです。
そして、折茂さんがバスケットマンとか関係なく1人の男として丸裸で心を曝け出して伝えたい義理堅い思い。
そして3つ目は固有名詞で言うなら北海道になってしまうのだけど、その背景にいらっしゃる固有名詞では表しきれない人々への、人生で味わったことの無かった感動を味わわせてくれたことへの恩返し、(ここにはバスケットマンとしての若気の更生の意味合いも少しあるのかも)感謝の思い、口だけではなく向き合っていく覚悟をただただ皆さんに届けたいというラブレターにも近いメッセージ。
この3つが時系列とともに、それこそバスケボールのシューティングのように時には低い弾道で、時には素晴らしい弧を描いて、様々な角度から一つのリングに向かって気持ち良く吸い込まれていく……ずっと見ていられる・・・ずっとその中に居たい、そんな感覚に落ち入らせてくれる一冊です。
最初の日本バスケットボール界の歴史の部分。
Bリーグにとどまらない日本バスケ史
これはずっと見てきたファンの方にも懐かしい思い出や折茂さんの口から聞きたい名前などに胸踊る。そして今のBリーグしか知らないブースターの方や選手、僕のように途中から見始めたファン、その事実が忘れ去られてしまった未来に届ける意味でも、トップリーグ時代からbjリーグとの2リーグ時代、そしてBリーグ発足まで、興味深い史料としての側面もある。そこだけでもへぇ、ほぉ、マジで?の連続で興味深い。
そして日本バスケットボール界への思いの部分。折茂さんとケン(言わずと知れたミスターバスケットボール佐古賢一さん。敢えて作中の折茂さんの呼び方で書かせてもらいます)の日本代表若手時代の男の契りはドラマや映画を彷彿させられます。まるで映画キッズリターンの最後のような男なら誰もが憧れるシーンが本人の口からしっかりと記されています。そして折茂さん自身に起きてしまった病気の話など今まで語られることの無かった話も出てきて衝撃を受けます。川淵初代チェアマンとの粋なやりとりも必読の価値有り。
なぜ折茂武彦はあんなにも腰が低いのか?
2つめの男・折茂武彦として義理堅い思い。それは本当に丸裸の言葉と真実で綴られていて、こんなにぶっちゃけてしまっていいの?と思うぐらいに丸裸。男なら絶対にそんなこと本に文字として残したくない。それは馬鹿で面長の僕でもわかる。
それは僕が折茂さんに初めてお食事に連れて行って頂いた時にも受けた印象で“この人は何故、年下の僕に丁寧な敬語を使いながらもこんなに心の内を話してくれるのだろう”だった。
その後、僕のYouTubeチャンネル、『バスケでババババーン』(しっかり宣伝もすいません。無駄に芸歴重ねているものでしたたかさも少し)のインタビューに出て頂いた時にも感じ、そしてこの本を読んで僕なりに一つの答えに辿り着いた。
この人は“自分の思いに対して嘘をつけない人”なんだと。
プレースタイルの味方のスクリーン(詳しくはこの本の中に)を使って敵を欺きフリーでボールを貰い得点を量産する姿とは裏腹に、人間折茂武彦さんは“誠実”そのものなのである。たぶん会って接したことのある人はみんな感じていると思われる。嘘つきなのはプレースタイルと年齢を感じさせないみた目と言葉のチョイス(折茂さんは少し砕けた時に若者っぽい言葉を平気で使う)だけなのである。
そんな折茂さんだからきっと、人に言うのは憚られることだとしても記さずにはいられなかった、記しておきたかったことなのだと思う。コートの内外にファンが多い一因である。ほんまにカッコええんねんなぁ。(真似して砕けてみました。すいません)
息づく「勝者のメンタリティ」
そしてそして、最後のブースターからだけではなく北海道で経験させてもらったこと。
挑戦から結果を出すところまで当時のバスケットボール界の全てを経験したような元のチーム時代に辿りつけなかった境地を感じさせてくれた北海道に恩返しをするという覚悟、そして社長としての所信表明、直接言葉を届け切れない方々への感謝のラブレター。これは僕の拙い文章ではなく、正しく選び抜かれたご本人の言葉から感じてもらった方が絶対に良いのでぜひご一読ください。
この本を読めば、あなたもきっと折茂武彦さんという人間の誠実さに魅せられていると思います。
そして自分に置き換え仕事をやり切るという活力を与えてくれます。
この本はバスケットボール好きのブースター、ファンの方はもちろん、バスケットボール選手をはじめとした全てのアスリート、これから何かを始めたい人、壁にぶつかっている人、リーダーになりたい人、出世して責任の立場にあるけどまだまだ何かを成し遂げたい人、人生にやる気が出ない人、男として覚悟をもって生きている人、旦那のことを理解したいけどつい理解し切れずにいる奥様、横田CEO、すなわち人生まだまだガンバレる全ての皆様に刺さります。人生でレジェンドと呼ばれたことのない全ての人間の心に突き刺さる一冊なのです。
この本を読み終えた時、あなたの心にはきっと勝者のメンタリティが宿り始めているでしょう。
追伸
しつこいようですがこの本の書評は僕より相応しい方々がたくさんいらっしゃることをしっかりと自覚した上でそれでも書かせていただきました。バスケットボール界のすぐそばで応援している1ファンとしてこんなに光栄なことはありません。貴重な機会を頂きまして本当にありがとうございました。乱筆乱文小ボケ失礼しました。 2020.10.31 麒麟田村裕