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反政府デモが拡大するタイ(2020年10月25日、写真:ロイター/アフロ)

(文:樋泉克夫)

 10月14日、タイ・バンコクではプラユット・チャンオチャ政権の退陣と王室改革を求める大規模な政治集会が開かれた。

 警備当局が厳戒態勢を敷く中、時計の針が深夜0時を過ぎても街頭行動が止むことはなかった。15日払暁には、プラユット政権が5人以上の集会禁止措置を含む非常事態宣言をバンコクに発し、午後になると同措置を11月13日までの30日間に延長することを明らかにした。

 13日から15日にかけ、デモ隊指導者の50人前後が逮捕され、「平民団体」を名乗る集会の主催者が解散宣言を発したにもかかわらず、「1人1人が指導者」を掲げた参加者の街頭行動はエスカレートする一方だった。

「人民バンザイ」
「封建体制は必ず滅ぶ」
「プラユットは無能」
「我らが友人を釈放せよ」

 との叫びは、終日続いた。

 14日から15日にかけ王毅・中国外交部長がタイを訪問し、プラユット首相と会談したこともあってか、街頭には「香港独立旗」や「チベット独立旗」までが登場している。

 17日午前には地下鉄と高架鉄道駅での示威行動が噂されたことから、当局が空港路線を含む首都圏交通網を停止し、香港で昨年6月に発生した混乱の再現が危惧される。

混乱の鎮静化は容易ではない

 プラユット首相は、「絶対に退陣しない」「香港型の混乱は許さない」と発言する一方、全国民の支持を呼び掛ける。

 だが、デモは一向に収まる気配はなく、21日夜には首相退陣を求めて首相府へのデモが敢行された。これに対しプラユット首相は「平和的デモ」を条件に、22日に非常事態宣言解除をしたのである。

 まさに朝令暮改的な政府側の対応の背景を考えるなら、かりにプラユット首相が退陣したとしても、混乱の鎮静化は容易ではないだろう。

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