(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)
米国でコロナ禍が拡大した3月以降、米中関係が悪化している。トランプ政権はコロナの責任を中国に押しつけたい意図が丸見えだが、中国側にももちろん大きな責任はある。トランプ大統領は対中関係悪化の流れで、6月にはウイグル人権政策法、7月には香港自治法に署名した。いずれも習近平政権による人権抑圧が悪化しており、米国が圧力をかけるのは適切な措置といえるだろう。
もっとも、習近平政権が人権を抑圧しているのは、新疆ウイグル自治区と香港特別行政区だけではない。2012年の政権発足以来、習近平は自身の独裁色を強化しており、中国国民の自由をますます抑圧するようになっている。
もともと中国の国民監視システムはきわめて強固だったが、習近平政権下でさらに強化された。現在の仕組みを解説してみよう。
中央国家安全委員会が最高意思決定機関
まず、全体の国民監視・弾圧のための権力の主な構図を示すと、次のようになっている。
中央国家安全委員会(トップは習近平)
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中央政法委員会(トップは郭声琨・前公安部長)
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公安部(トップは趙克志・部長。実権は王小洪・副部長)
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公安部国内安全保衛局(1局/トップは陳思源)
中国の国家保安機構の体制は、習近平が創設した党の「中央国家安全委員会」で審議される。これは常設ではないが、中国版NSC(国家安全保障会議)といえる機構で、習近平が主席を務める。