一方で同調査のスマートフォン・タブレット端末の項目は65歳未満の視覚障害者は24.7%、聴覚・言語障害50%、肢体不自由者32.8%、内部障害者36.2%となっている。障害者向けのアプリやサービスの登場によって、今後はさらにスマホが障害者の情報入手手段として高い割合を占めていくことが予想される。Sさんは60歳を前にパソコンが自分の生活の役に立つと考えて使い始め、その後タブレット端末を練習し、最近になってスマホを持つに至った。機器の操作でわからないことは、YouTubeで検索するとたくさんの解説動画があるので、音声で理解することができ、一人で解決できることも多いそうだ。

 後天的に障害をもったSさんは、点字が読めない。また長く障害と共に生きてきた人たちが当たり前に知っている道具の存在を知ることも難しかったという。しかし健常者が使うデジタル機器によって、読めたり見えたりする対象は、ぐんと広がった。

 Sさんはメールやチャットアプリを使ってのやりとりが楽にできるようになったので、自分たちの生活に役立つ物の情報や、映画や美術館などのイベント情報がメルマガなどプッシュ型で得たいと思っているそうだ。そういったサービスを提供しているところは既にあるかもしれないが、彼女にはまだリーチできていない。

 日本眼科医会が2009年に発表した調査では、2007年の段階で失明者、ロービジョン者を合わせると推定164万人の視覚障害者がいるという。スマホやパソコンでの読み上げを前提としたウェブサイトや、プッシュ型の情報提供がさらに求められることになるだろう。

社会の意識も「視覚障害者+スマホは当たり前」へアップデートを

 障害を持つ当事者だけでなく、健常者も新しい技術の情報を知っておくことは社会的なメリットがある。

 障害者が支援者の助けを手厚く得ながら生活できることは重要だ。さらにデジタル技術によって「一人でできる」ことは、相手の都合や相性を気にせず、申し訳ない気持ちを持つこともないので、何ものにも代えがたい達成感だとSさんは言う。その一方で、店の商品や街の風景にスマホを向けることが盗撮や不審な行為とみられるのではないかと心配になっている。

 2016年には白杖を持ちながらスマホを操作していた視覚障害者が「見えてるんじゃないのか?」などと心ない言葉をかけられたことから、「白杖=全盲とは限りません」と書いたキャラクターのストラップが当事者たちによって作られた経緯もある。障害者向けの技術やサービスの情報が当事者に届くことも重要だが、健常者がその存在を知っていることで、誤った印象による偏見も少なくなっていくだろう。

 また、厚労省の調査結果にあるように、「家族・友人・介助者」は情報源の大部分を占めている。さらに当事者が、デジタル機器によって近しい人たちだけでなく、遠くにいる友人や健常者の知人にも容易につながることができるようになった今、あらゆる人が情報源になることができる。もちろん、親切で知らせた情報が間違っていたり、デマである危険には注意しなければならないが、「こんなものがあるよ」と知らせる“ちょっとしたおせっかい”なコミュニケーションが、最新技術と当事者を繋ぐ大切な架け橋になる可能性がある。

 すべての人が「白杖を持った視覚障害者がスマホを持っているのは、当たり前」と、意識をアップデートすることが必要なのだ。