一躍大ヒット、異端が育てる安心野菜

(熊本県・果実堂)

2009.02.25(Wed)鶴岡 弘之

 確かに果実堂の安全性へのこだわりは徹底している。まず、栽培方法は有機栽培であり、農薬や化学肥料をまったく使わない。それも厳しい基準をクリアした有機栽培農家に与えられる「有機JAS」認定を受けている。

 また、トレーサビリティーの構築にも全力を傾けている。例えば、あるスーパーで販売したベビーリーフに問題があった場合、どの農場でいつ誰が収穫し、いつパッキングされたものなのか、もっとさかのぼると、いつ誰が種をまき、いつ水を与えたのかなどが、問題発生時から15分以内にすべて分かるという。

 井出社長は、「契約農家に栽培を任せるのではなく、農場も工場も自分たちで管理しています。だから、ここまでのトレーサビリティーが可能になるのです」と胸を張る。

市場は自分たちで切り開く

 水洗いをするだけで簡単に栄養価の高いサラダが作れるベビーリーフは、主婦やOLの間で人気が高まっている。消費者の安全性への関心が高まっていることもビジネスの追い風である。

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 そうした追い風を全面に受け、果実堂は売り上げを拡大している。2008年度の売り上げは約3億円。2009年度は5億円以上の売り上げを見込む。そのうちベビーリーフの売り上げが約8割を占める(2割は健康食品の製造販売や受託研究の売り上げである)。1棟で始めたビニールハウスは今や200棟を超え、年間100トンのベビーリーフを出荷するまでになった。

 現在、ミズナ、ルッコラ、ビート、レッドアジアンマスタードなど十数種類のベビーリーフを栽培。毎日、収穫し、8~10種類のリーフを組み合わせて自社工場でパッキングする。そしてイオングループ、大丸や高島屋、ダイエーといった全国のデパートやスーパーに直接、配送する。

 このように農協や卸売市場を通さないという点も、従来の農業とは一線を画している。熊本市内の養鶏会社、コッコファーム(記事はこちら)も同様だったように、農家が自分たちで市場を切り開き、価格を決め、収益をコントロールすることが、農業を強い産業にしていくカギだろう。

 日本の消費者が中国産から国産農産物に回帰している今、井出社長は「日本の農業はビッグチャンスを迎えている」と言う。だが、従来の発想とやり方のままでは、チャンスを生かして、大きく発展することは望めない。果実堂の場合は、研究所生まれという「異端」だからこそ、農業の常識を覆すことができた。イノベーションのヒントは、案外、異端や辺境の世界に埋もれているのである。

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