一般財団法人日本情報経済社会推進協会は2020年9月24日、株式会社アイ・ティ・アールとの合同による「企業IT利活用動向調査」の結果を発表した。本調査は毎年1月に実施していたが、今回新型コロナの感染拡大を受けて同年7月にも緊急に実施し、国内企業727社のIT/情報セキュリティ責任者から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症拡大下における企業のセキュリティ対策をはじめ、働き方の変容が明らかとなった。

約5割が「テレワーク環境におけるセキュリティ対策」を重視

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令を受け、企業におけるITの思考や行動はどのように変化したのだろうか。

 はじめに、「緊急事態宣言下で業務を円滑に遂行するために重視した点」を尋ねた。その結果、49.1%の約半数の企業が「テレワーク環境におけるセキュリティ対策」を選択。以下、「仕事環境の整備」が41%、「使用機器に対するセキュリティ対策」が33.6%などが続いた。多くの企業がテレワークへの転換を余儀なくされ、「仕事環境の整備」だけでなく、情報漏えいなどの「セキュリティ・インシデント防止」を実施しており、企業のセキュリティ意識の高さがうかがえる結果となった。

コロナ禍で「働き方改革」が大きく進展

 次に、働き方改革への取組み状況を2020年1月の調査時点と比較した。すると、「テレワーク(モバイルワーク)制度の整備」を行った企業は、1月は27.6%だったのに対し7月は42.4%となり、約15%増加している結果に。また、「在宅勤務制度の整備」は25.5%から39.6%と約14%増、「働き方改革に伴うITシステムの導入」では27.6%から35.9%と約8%の増加となった。

 働き方改革に向けた取り組みは、過去の調査では緩やかな進展にとどまってたというが、コロナ禍を機に大きく変化したことがうかがえる。

セキュリティ対策面の伸び率は「企業向けコミュニケーションサービス利用」と「在宅勤務下のセキュリティ規定の整備」が顕著に

 また、「働き方改革実現に向けた、セキュリティ面での対策」を2020年1月時点と比較。最も増加したのは「在宅勤務、テレワーク用のセキュリティ規程の整備と教育」で、27.3%から40.2%となり、約13%増加したことがわかった。次いで、「法人向けのコミュニケーションツール(Web会議/チャット/メッセンジャー)の利用」が37%から45.1%と約8%増加。コロナ禍での新たな勤務環境に対応したセキュリティ規程やシステムが、半年足らずで急速に整備されたことが判明した。

およそ3割が取引先選定時に認証取得の有無を重視

 さらに、テレワーク環境時のセキュリティ対策として、取引先選定時にコロナ以前よりも「プライバシーマーク」や「ISMS」の取得状況を重視するようになったかを尋ねた。すると、「(新型コロナを機に)重視するように変わった」との回答が、それぞれ30%をこえる結果に。さらに、「(新型コロナ)以前より重視しており、今後も重視する」の回答を合わせると、いずれも約60%が重視していることが判明した。

 コロナ禍で、実際に取引先への訪問と評価が困難になったことで、第三者認証取得の有無が、選定評価の判断基準としてより重要度を増したと考えられる。

コロナ禍で「第三者認証」の取得予定企業が増加

 また、パンデミック前後で自社のプライバシーマークとISMSの認証取得状況を比較した。その結果、1月から特に大きな変化は見られなかったものの、今回の調査で「今後取得する予定」とした企業が、プライバシーマークで17.1%、ISMSは18.3%となり、それぞれ1月時点よりも増加したことが判明。テレワーク環境で、よりマネジメント体制の重要性が増したことが予測される。

「電子契約」の検討企業が増加

 また、テレワークを阻害する要因の一つとして「ハンコ」問題が明るみになり、電子契約への関心はさらに高まっている。このような中で、「複数/一部の取引先間で電子契約を採用している」とした企業は7月時点でも1月と大きな変化はなく、約4割となった。しかし、「今後採用を検討中」(自社開発および外部サービス利用)とした企業の割合は、1月の27.5%から、35.6%と、約8%増加。テレワーク下での事務手続きの効率化を図るため、従来の紙の契約書から電子契約への移行が進みつつあると思われる。

 コロナ禍により、働き方に変革がもたらされた企業も多いだろう。テレワークを中心とする柔軟な働き方への転換と、それに合わせたセキュリティ施策実施の流れは、今後もますます進んでいきそうだ。

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HRプロ編集部

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