(文:鷲尾香一)
店舗が消える――。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、消費者の行動は大きく変化した。今や店舗を構えても商売は成り立ちにくくなっている。ネットショッピングの利用拡大により、店舗は消えようとしている。
新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言に伴う外出と営業の自粛要請が、観光・宿泊業、飲食業、小売業、サービス業などの様々な業種に壊滅的な打撃を与えたのは、ご存じの通りだ。
「巣ごもり消費」が活発化し、消費の場は「店舗」から「ネット」へと大きくシフトを起こした。
5月25日に緊急事態宣言が全面的に解除され、経済活動が正常化に向かって動き出した後、消費の場はネットから店舗への回帰が徐々に進んでいるものの、その動きは遅々としたもので、ネットにシフトする消費の場の流れを押しとどめるものにはなっていない。
ネット購入「総額」も「利用世帯」も急増
こうした状況は、経済統計でもはっきりと確認することができる。
総務省の「家計消費状況調査」では、インターネットを利用した消費の状況を調査集計、毎月発表している。それによると、「インターネットを利用した支出総額」(図1)では、新型コロナの感染拡大が懸念され始めた2月以降、支出額が急増していることが見て取れる。
この「支出総額」とは、全国の総世帯から抽出した世帯が1カ月間に使ったネットショッピング額(食料、衣類、医療、雑貨、書籍、音楽、旅行など22品目)の1世帯当たりの平均を示している。
例年、12月はインターネットのショッピングサイトなどがセールなど年末商戦を実施するため、1年間で最も支出額が大きくなる。図1で示された2019年12月は、前月から急増して1万7000円を超えた。
そして、これも例年の傾向だが2月に最低額まで落ち込む。以後は毎月微増減の横ばいで推移する。ところが今年は2月以後毎月急増し、6月には12月のセール時とほぼ同額の1万7000円台まで増加しているのだ。
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