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写真:ロイター/アフロ

(文:鷲尾香一)

「新型コロナウイルス」感染拡大防止のための緊急事態宣言の発出、それに伴う休業要請や外出自粛は、経済・企業活動を停止させ、雇用情勢を大幅に悪化させた。連日の報道でよくよくご承知だろうし、解雇や契約停止など現実に身に降りかかっている方も多いだろう。

 まずは、雇用の現状を見てみよう。表1は、総務省が毎月発表している『労働力調査(季節調整値)』による雇用の状態の推移だ。

表1 労働力の推移:季節調整値(単位:万人、カッコ内は前月比)

 これによると、「労働力人口」(15歳以上の人口のうち、「就業者」と求職中の「完全失業者」の合計)は、4月に前月比99万人も減少したが、5月には同21万人増加している。

 一方、「非労働力人口」(15歳以上の人口のうち「通学」「家事」「その他高齢者」など「労働力」以外)は、4月には同94万人増加したが、5月には同21万人減少している。

 これを見れば、労働力人口と非労働力人口の動きはおおよそ整合性が取れており、数の見合った動きとなっている。

 しかし問題なのは、5月の労働力人口のうち、就業者が同4万人の増加にとどまっていることだ。

「労働力人口」を膨らませたのは「完全失業者」

 では、就業者が同4万人しか増加していないのに、なぜ、労働力人口は同21万人も増加したのか。

 それはとりもなおざす、完全失業者が同19万人も増加したためである。前述の通り、労働力人口の中には「就業者」だけでなく、「完全失業者」もカウントされているのだ。

 簡単に言えば、「労働力人口」とは「働く意思がある人」で、対する「非労働力人口」とは「働く意思がない人」という括りなので、失業中でも働く意思があって求職していれば「労働力」ということになる。つまり、非労働力人口が同21万人減少したのは、完全失業者の同19万人の増加に振り替わったということになる。

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