(PanAsiaNews:大塚智彦)
南シナ海の南端に位置するインドネシアのリアウ諸島州ナツナ諸島周辺にあるインドネシアの排他的経済水域(EEZ)に中国の公船が侵入して、インドネシア側の警告を無視して居続ける事案が発生していたことがインドネシア海上治安当局の発表で明らかになった。インドネシア外務省は在ジャカルタ中国大使館関係者に対して「EEZ侵入は問題であると指摘して直ちに退去するよう」求めたという。
南シナ海で自らの権益が及ぶ海域として中国は一方的に「九段線」という範囲を設定している。しかし国際海洋法条約など国際的には一切認められておらず、南シナ海に点在する西沙諸島、南沙諸島などでのフィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾などと中国による領有権争いの元凶となっている。
インドネシアと中国の間では、直接的な領土(島)に関する領有権争いはないものの、「ナツナ諸島北部の海域でインドネシアのEEZと中国の『九段線』が一部重複する海域がある」と中国側はかねてから主張、「2国間での話し合いによる解決を目指す」としている。
しかしインドネシア側の立場は全く違う。従来から「権益が重複する海域などそもそも存在せず、2国間で話し合うことなどない」として、この問題に関しては強い姿勢を貫いている。
EEZへの居座り、ASEAN会議に合わせた示威行為か
インドネシアの「海上保安機構(BAKAMLA)」(=日本の海上保安庁に相当)は9月12日、ナツナ諸島北方南シナ海(インドネシアは北ナツナ海と呼称)海域にあるインドネシアのEEZに中国の公船である海警局所属の哨戒艇「海警5204号」が侵入しているのを確認、退去を命じたことを明らかにした。
BAKAMLAや外務省が地元メディアに伝えたところによると、12日午前10時ごろ、EEZ内に進入した中国の「海警局5204号」と中国漁船4隻を探知、現場にBAKAMLAの巡視船が向かい、目視の後、退去を命じた。
ところが中国側は「(自国の権益が及ぶ)九段線に沿って航行している」として退去命令に一切応じなかった。このため外務省がジャカルタの中国大使館の幹部に対して抗議と説明を求める事態になった。