神道のお葬式もあるにはあるが、数は少ない(写真:ロイター/アフロ)

(玉川将人:SOBANI編集部)

 初詣に近くの神社にお参りするという方は多いでしょう。結婚式を神社で、という話もよく耳にします。しかしお葬式を神道式で、というのは非常に少数派です。なぜでしょうか。今回はその点を解説してみましょう。

教祖や開祖がいない神道

 まずは神道とはなにか、仏教とどのように関わりあって現代に至るのかをおさえておきましょう。

 神道は日本特有の宗教です。キリスト教のイエス、イスラム教のムハンマド、仏教の釈迦のような教祖や開祖が神道にはいませんし、『聖書』や『コーラン』『法華経』などの経典もありません。つまり、特定の象徴やよりどころをもたずに、自然崇拝や祖霊(先祖の霊)、また八百万の神などといいますが、そういった自然発生的ともいえる神々の観念に基づく信仰が神道の基盤です。仏教伝来よりも以前に日本人の文化・生活の中に浸透し、大切にされてきた宗教です。

 仏教が日本にやってきたのは6世紀半ばです。以降、神道と仏教は、どちらかがとちらかに取り込まれてしまうというようなことはなく、江戸時代に至るまで延々とバランスよく融合・共存して日本人の宗教性を支えてきました。これを「神仏習合」と呼びます。

 しかし、明治に入ると天皇を頂点とした神道を基盤にする近代国家が目指されたため(国家神道)、この神仏習合は明治新政府によって無理矢理に分離されます(神仏分離)。寺や仏像、経典を破壊する「廃仏毀釈」という黒い歴史が日本史に刻まれたのもこの時でした。国家神道は第二次世界大戦の終焉とともに廃止となりました。その後、神社や寺院はそれぞれに宗教法人となり今日に至ります。