また住宅の賃貸借料が上昇し、借家住まいの市民の生活にもしわ寄せがきている。
手が付けられないほど住宅価格が上昇した背景には、国民の熱心な不動産投資がある。住宅は国民の投資対象として最大のものとなっており、銀行から借金して不動産を購入する人が後を絶たなかった。それだけに、住宅価格が一気に下落するような政策をとれば、借金地獄に陥る人が続出するだろうし、なにより銀行の経営が脅かされることになりかねない。文政権は、これまでの失政によって、そのレベルまで住宅価格上昇のペースを速めてしまっている。
不動産政策の失敗で蟻地獄に陥った文政権は、出口を見いだせなくなっている。今後2年間続く文政権にとって、おそらく不動産対策は最大の弱点となり続けるのではないだろうか。
政権・与党幹部の不動産投資に国民の怒り
韓国の代表的市民運動団体である、経済正義実践市民連合は昨年12月、「大統領府秘書室の高位公職者の32%が複数住宅保有者であり、文在寅政権の3年間で、彼らの不動産資産は平均3億2000万ウォン(約2900万円)増加した」と明らかにした。
住宅価格の高騰で一般市民が苦しんでいる中、この事実は文政権にとってアキレス腱となっていた。
そこで文政権では今年4月の総選挙に先立ち、盧英敏(ノ・ヨンミン)秘書室長が中心となって、実際に居住している住宅を除き、高位公職者が保有する不動産を売却する方針を打ち出した。また、共に民主党でも総選挙に出馬する候補者全員に「首都圏などの不動産規制地域に2住宅以上保有している候補者は、当選したら2年以内に実際に住んでいる住宅以外のすべての住宅を売却する」という覚書に署名させた。
そこで不動産売却政策の中心人物である盧秘書室長自身も、ソウル市の高級住宅地・江南の住宅と地元・清州の2住宅のうち、清州の住宅を売却すると表明した。ところが、選挙区の地盤の住宅を捨て、高級住宅地の住宅を選んだと非難を浴びることとなってしまう。ついには、江南の住宅まで売却せざるを得なくなってしまった。文在寅政権にとって、これは国民の信頼を大きく損なう出来事になった。
さらに大きな批判を浴びた政権幹部もいる。曺国(チョ・グク)氏の後を継いで民情首席秘書官となった金照源(キム・ジョウォン)氏である。
江南に2戸の住宅を保有しており、そのうち1戸を売りに出したのだが、このとき実際の相場よりも2億ウォン(約1800万円)高く売りに出したということで、買い手がつかないよう小細工したと批判された。ちなみに金秘書官の2戸のマンションは34.6億ウォンの価値があるとされ、文政権に入って8億9000万ウォン(約8000万円)の相場利益を得たのだという。まさに濡れ手で粟の錬金術というべきか。