ここ数年のいわゆる「組織ブーム」において、ずっと気になっていたことがあります。それは、「組織」と「売上・利益の相関性」が置き去りになってきたことです。「社内コミュニケーションが良くなった」、「社内満足度が上がった」という成果があがるのは良いことですが、一方では売上や利益を握っている人達、つまり社外の人達には、正直なところ社内コミュニケーションや社内満足度というのは直接的には関係のないことです。むしろ内向きの組織改革に集中しすぎて、その分、社外に対するコミュニケーションが以前に比べておろそか、ぞんざいになっていった会社も多かったのではないかと思います。

社外対応をおろそかにすることで、売上や利益が落ちる可能性も

 たとえばここ数年で私の経験で増えたのが、取引先の会社が使っているチャット形式のソーシャルツールを、外部の人達も選択権なく使わなければいけなくなったことです。経営者クラスの方と直接話をする場合は、「すみません、会社の都合でこのツールを使っているのでお願いできませんか……」と断りを入れてくださります。

 しかし、一般社員の方が担当の場合は、そうした風情のあるやりとりもなしに「やっちゃってください!」的にどんどん相手のペースで事が進んでいきます。そのおかげで私も時代に乗り遅れることなく、最新のツールを世の中に浸透する前から使わせていただいています。今となっては有難い話なのですが、最初はその「ノリ」についていくことに時間がかかりました。

 ソーシャルツールに関連した話になりますが、以前、取引先にメールを送っても全く返事が返ってこないことがあったのです。どうしたのだろうと思っていたら、3日後に「すみません、うちの会社は社内では日常のやりとりはメールではなくて、〇〇というツールを使っているので、3日間メールを見ていませんでした」という返事が、それぞれ違う会社から続けてありました。

 最初は、「いくらそうだといっても1日1回はメールチェックくらいするでしょう……」と思っていました。ただ、その後に、ある取引先の内部に入って仕事することがあり、チャット形式のソーシャルツールのアカウントとメールのアカウントの二つを持つ機会があったのです。その際、初めて、彼らの言っていたことがよくわかりました。

 チャット形式のソーシャルツールは常に動きがある感覚なので、つい気をとられて、メールは「たまにチェックすればいいか」という気持ちになっていきます。実際に、重要な話から他愛のない話まで、ありとあらゆるチャットのグループがそのソーシャルツールの中で作られ、朝から晩までやりとりがなされているのです。

 社内の人間同士でこのようなやりとりを1日していたら、社外の人達のことはどうしても二の次になる感覚を持ってしまうと思いました。この点は気を付けなければいけない部分です。なぜなら、外部の方達への対応をおろそかにするということは、売上や利益にも響いてくることになるからです。

 売上になる顧客に対しては、対応をおろそかにしてはいけないイメージが湧くでしょうが、発注先に対しては「自分達がお金を支払ってあげているんだから別にいいんじゃない」と考える人もいるかもしれません。しかし、良い発注先というのは、受注先候補をいくつも持っているので、担当者の態度が悪ければ、受注先との取引をどんどん差し替え、なくしていきます。

 したがって、発注先への態度をおろそかにしていると、「そこまでひどい対応をされても、そこの会社からの仕事を受けざるを得ない」という発注先しか残らなくなっていくでしょう。その結果、発注額の割にはクオリティが高くないものになっていき、売上や利益が落ちる一端になります。