マルグレーテ・ベステアー執行副委員長。 2020年6月17日欧州委員会にて(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 欧州連合(EU)の欧州委員会は8月4日、米グーグルが計画する米フィットビットの買収について、正式な調査を始めると明らかにした。グーグルが消費者の健康に関するデータを収集してネット広告に利用し、広告市場の支配的な地位をさらに強固にするのではないかと懸念している。

ベステアー執行副委員長、「市場競争が歪められることがないようにする」

 フィットビットは活動量計(フィットネス・トラッカー)やスマートウオッチなどのウエアラブル機器を手掛ける企業。グーグルが昨年11月に約21億ドル(約2200億円)で買収すると発表して以来、欧州の消費者団体である欧州消費者機構(BEUC)などが反対の意向を表明していた。これらの団体は、「他社の新製品・サービス開発が難しくなり、広告や検索、健康、ウエアラブルなどの市場で消費者の選択肢が狭まる」と主張している。

 欧州委で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー執行副委員長は今回の声明で、「消費者のウエアラブル利用は今後数年で急増するとみられている。これに伴いウエアラブル機器から収集されるデータは指数関数的に増えていく。これらのデータは、人々の生活や健康状態の実態を把握する上での手掛かりとなる。グーグルによるデータの支配によって市場競争が歪められることがないようにする」と述べている。

グーグル、「当初から広告に使わないことを明確にしている」

 一方、グーグルのハードウエア・サービス担当上級副社長のリック・オステロー氏も同日声明を出した。同氏は、「この買収取引の目的はハードウエアであってデータではない。当初から広告に使わないことを明確にしている。先日は、法的拘束力を伴う誓約書をもってフィットビットのデータを広告事業に利用しないことを公約する用意があると、欧州委に提案した」と述べた。

 同氏は、さらに ウエアラブル機器市場には、米アップルや韓国サムスン電子、米ガーミン、中国・華為技術(ファーウェイ)、中国・小米(シャオミ)などの数多くのメーカーが参入しており、活発な競争が存在すると、付け加えた。

 米調査会社のIDCによると、今年1~3月におけるウエアラブル機器のメーカー別出荷台数は、1位から、アップル、シャオミ、サムスン、ファーウェイ、フィットビットの順。米CNBCによると、フィットビットは2007年の設立以来、これまで1億個以上のウエアラブル機器を販売しており、利用者数は2800万人いる。

 グーグルによるフィットビットの買収が実現すれば、グーグルはこの市場の上位5社グループに入ることになる。その一方で、欧州委の調査によって、この買収が頓挫する可能性も出てきたとCNBCは伝えている。

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