米司法省ロゴ、2019年4月資料写真(写真:AP/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムの事業慣行について、米ワシントン州と米カリフォルニア州の司法長官が調査を始めたと、米ニューヨーク・タイムズや米ウォールストリート・ジャーナルが報じている。

ワシントン州やカリフォルニア州、出店業者の扱いなどを問題視

 アマゾンが本社を置くワシントン州では、EC(電子商取引)サイトにおける出店業者商品の表示方法を調査中だという。アマゾンはこれら業者が商品を販売するマーケットプレイスの運営者である。同時に、自らも商品を仕入れて販売しており、業者の競合という立場でもある。こうした中、ワシントン州はアマゾンが自社商品を有利に掲載していないかどうかを調べている。

 一方のカリフォルニア州では数カ月にわたり、アマゾンのプライベートブランド(PB)商品を調査していると関係者は話している。同社が出店業者の販売データを不正に入手し、自社商品の開発に利用していないかどうかを調べている。

 こうしたアマゾンの事業慣行については、欧州連合(EU)の欧州委員会も調査中だと伝えられている。米ブルームバーグは昨年7月、競争政策担当のマルグレーテ・ベステアー委員が正式調査を始めると報じていたが、ウォールストリート・ジャーナルなどは先週、欧州委が近く、EU競争法(独占禁止法)違反の疑いがあるとして、「異議告知書」をアマゾンに送付すると報じた。

 欧州委もマーケットプレイス運営者と小売業者としてのアマゾンの二重の役割を調査しているという。この異議告知書は競争法違反の疑いに関する欧州委の暫定的な見解を示したもので、受け取った企業には反論の機会が与えられる。欧州委はそれを考慮して、最終判断するという。

 アマゾンのPB商品については、米連邦議会の下院司法委員会が、反トラスト法(独占禁止法に相当)違反の疑いで調査しているとも伝えられている。同委員会は、アマゾンが出店業者の販売データを収集し、PB商品の開発に役立てていると指摘。ただ、アマゾンはすべての業者とアマゾンの販売データを合わせた「総合的な販売データ」を利用するにとどめていると主張。同社は、個々の業者のデータを製品展開や価格設定、調達、在庫管理などの意思決定に利用することを禁じているとも説明している。

米司法当局、グーグルを近く提訴する構え

 アマゾンは、米国などの司法当局が独禁法違反の疑いで調査対象としている米テクノロジー大手の1社。だが、ニューヨーク・タイムズによると、現在のところ、同社の事業慣行に対する当局の関心は比較的薄く、まだアマゾンは厳しい状況に直面していないという。