これまでの「官民連携」は必ずしもうまくいったとは言えない。行政と企業(官と民)の関係は、今後連携(パートナーシップ)から共創(コクリエーション)に移行していくだろう。「官民共創」によって、徹底した顧客志向をベースにして、事業性と公共性のバランスを保った公共サービス目指す必要がある。(JBpress)
※本記事はPublicLab(パブラボ)に掲載された「SDGsに見る、官民連携から官民共創へのシフト(1)~(4)」を再構成したものです。
(伊藤大貴:株式会社Public dots & Company代表取締役)
2019年8月、経済産業省が1本の政策提言レポートをウェブサイトに公開しました。それが「21世紀の『公共』の設計図」です。サブタイトルには「ちいさく大きいガバメントのつくりかた」とあります。非常に重要なレポートなので、本稿冒頭では、このレポートを少し解説しつつ、これから起きる官と民の関係性の変化を読み解きたいと思います。
それは一言で表せば、「官民連携」から「官民共創」へのシフト、です。行政と企業の関係が連携(パートナーシップ)から共創(コクリエーション)に移行し、公共サービスの在り方もビジネスの在り方も大きく変わる可能性があります。こうした変化を後押しするのがSDGs(持続可能な開発目標)です。この社会の変化を適切に捉える自治体と、捉えられない自治体では都市経営に大きな差が生じていくはずです。どういうことかは、後ほど触れましょう。まずは「21世紀の『公共』の設計図」を見てみたいと思います。
国が認めた行政の限界
「21世紀の『公共』の設計図」には、自治体にとっても企業にとっても、ハッとさせられる言葉が載っています。例えば、こんなくだりです。「政府が公共の一切を管理し運営する社会では、サービスの質が低下してしまう」。ここでいう政府は行政を意味しますから、自治体とも置き換えられるわけですが、要は公共サービスを行政が担う今までのやり方だと、住民ニーズに合ったクオリティーを出すことが難しくなっているということを言っています。
地方自治法の「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」(第2条第14項)を達成するのが難しい状況にある、ということを中央省庁が公式レポートで認めるというのは非常に衝撃の大きいことでした。もっとも口にこそ出さないものの、自分たちが提供する公共サービスが市民ニーズを満たしにくくなっている状況に葛藤している自治体があるのも事実です。