富士通株式会社は2020年7月、人事制度やオフィス環境を刷新する新しい働き方「Work Life Shift」を推進すると発表。新型コロナウイルス感染症拡大によってもたらされた「ニューノーマル」に対応するため、同社のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を加速させ、生産性向上と新たな価値創造に取り組むとしている。
コロナ禍によりDXへの推進を加速
富士通は、去る2017年からテレワーク勤務制度を導入し、多様な人材の活躍を重視する柔軟な働き方に取り組んできた。また、2020年4月からは、同社のDX化の推進を目的として、人事制度を刷新。国内グループの幹部社員約1万5,000人を対象にジョブ型人事制度を適用し、果たすべき職責の明確化に加え、職責に応じた報酬設定と柔軟な人材配置を実現した。
このような中、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、多くの企業がニューノーマルに対応したビジネスモデルや業務プロセス、働き方への変革を求められるようになった。これを受け、同社はDX企業への変革を加速させ、生産性を高めつつイノベーションを創出し続けるための新しい働き方として、「Work Life Shift」を推進するという。
「Smart Working」「Borderless Office」「Culture Change」の3要素で、「働く」と「生活」をシフト
「Work Life Shift」は、「仕事」と「生活」両面における現状からのシフトにより、Well-beingを実現するというコンセプトで、「Smart Working」「Borderless Office」「Culture Change」の3要素で構成されている。それぞれの要素を実現するための具体的な施策は以下の通りだ。
「Smart Working」では、最適な働き方の実現を目指し、約8万人の国内グループ社員の勤務形態として、テレワークを標準化。業務内容やライフスタイルに応じ、時間や場所をフレキシブルに選べる働き方を実現するものだ。これにより、生産性の向上および従来の通勤概念を変化させ、仕事と生活の両面におけるエンゲージメント向上につなげていく。
これに向け、同年7月から「フルフレックス勤務制の適用範囲を全国の従業員に拡大」、「月額5,000円の在宅勤務の環境整備費用補助の支給」、「通勤定期代の支給廃止」、「テレワークと出張で業務に対応できる単身赴任者の自宅勤務への切り替え」などに取り組んでいる。
「Borderless Office」では、オフィスの在り方を見直し、従来からの固定的な働き方の概念を変化させる。働く場所を、業務内容に合わせて自宅やハブオフィス、サテライトオフィスなどから自由に選択できるようにする。
具体的には、2022年度末を目途に「最先端のITシステムの実証やショーケース」、「顧客とのコラボレーション」など、それぞれ主な機能を持つハブオフィスを全国各エリアに設定。また、全席フリーアドレス化を実施し、現状のオフィス規模を50%程度に縮小して最適化する。このほか、2021年9月までには「サテライトオフィスのスペース拡張」とともに、多拠点対応のTV会議システムなど、ハブオフィスと同等のインフラ環境を用意する計画だ(下記の画像を参照)。
「Culture Change」では、チームとしての成果の最大化や生産性向上に向け、従業員の自律性と信頼に基づく「ピープルマネジメント」を実施。従業員からの声を随時吸い上げ、業務状況を可視化、分析するデジタルプラットフォームを活用し、働き方の最適化を追求し続ける。
そのために、同年7月から全従業員を対象に、1対1のコミュニケーションスキルアップ研修を実施。また2020年度中には、ジョブ型人事制度の適用範囲をさらに拡大し、一般社員にも適用するという。
Withコロナ/Afterコロナにより、「働く」ことの在り方が問われている。仕事や生活における個々人のエンゲージメント向上と、企業の持続的成長を両立させるためには、状況に応じた働き方と環境の見直しが必要となるだろう。
著者プロフィール HRプロ編集部 採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。 |