(数多 久遠:小説家・軍事評論家)
イージス・アショアの配備計画中断により、にわかに「策源地(敵の出撃地)攻撃」、あるいは「敵基地攻撃」能力が話題となっています。
策源地攻撃能力を持つことにはもちろん賛成なのですが、私を含めた多くの識者は、イージス・アショア導入を止めて策源地攻撃、という方向には疑問を呈しています。
その理由はいくつもありますが、策源地攻撃、もっと具体的に言えば、日本を狙う弾道ミサイルや超音速滑空弾のランチャー(発射機)を破壊するための偵察能力が不足していることがその1つです。
日本が保有する策源地攻撃のための偵察機能を担うのは、情報収集衛星と、偵察機RF-4E/EJからバトンタッチされるグローバルホークです。情報収集衛星を数多く飛ばし、さらに最新の偵察用UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)であるグローバルホークがあれば、十分な偵察ができるのではないかと思う方が多いかもしれません。しかし、これだけでは、はなはだ不十分なのです。
そこで以下では、日本の偵察能力で、何ができ、何ができないのかを概括し、策源地攻撃の実現性と弾道ミサイル防衛のあるべき姿について考えてみたいと思います。