もちろん、受診を躊躇して自宅にいることで重症化を招くケースもある。そのような場合は早急に受診すべきだ。そういったリスクがある以上、受診を控えるべきではないというもっともな意見も聞かれる。確かにそのようなリスクはあるが、多くの国民がこれまでのように受診する必要があるか否かは、今回の受診の減少によって国民の健康状態がどの程度悪化したか、特にどれだけ重症化したかというデータで検証すべきことである。

 他方、コロナ感染症患者を受け入れる医療機関では、今後もパンデミックの可能性がある以上、一定数の病床はそのために確保しておかなければならない。ただ、一般患者用の病床を減らした分の減収も含めて、その費用負担は大きい。病床は患者を入院させてこそ収益に結びつく。空床のまま多数維持しておくのは難しいであろう。

 パンデミックに備え、感染症専門の病院を国が恒常的に設置すべきだという意見もある。全国でどれくらい感染症のための病床が必要か、それを常に維持するためのコストを誰がどのように負担するのか。今後、コロナウイルス以上に恐ろしいパンデミックの発生がないとは言えない以上、それへの対応は必要だろう。

 そう考えてくると、病院の機能にしても、病床の区分にしても、これまでの状態に戻ることはできまい。民間病院が大半を占めるわが国において、非常時に医療を支える体制を構築しなければ、いざというときに「医療崩壊」に陥りかねない。

非常時に出動する医療版「予備役」の整備を

 では、どのようにすべきか? まだ、状況が終息しておらず、答えを出すことは難しいが、今こそ医療の提供体制を抜本的に見直す契機とすべきではないか。

 人口減少と高齢化が進む地域では、コロナ感染症が蔓延しなくても、その地域の医療機関の経営は厳しくなっていくことが予想されている。民間病院が8割を占める日本の現状では、政府による医療サービスの供給コントロールは容易ではないといわれている。しかし、医療需要が減少する地域で競争に任せて無秩序な医療機関の閉鎖や倒産が起これば、それこそ地域医療が崩壊する。これはどうしても防がなければならない。

 そのような状態を回避し、医療サービスの供給を存続させるためには、高齢者の在宅での医療や介護が多くを占める地域ではとりわけ、国民が最初に受診し、総合医がゲートキーパー的な役割を果たすプライマリケアを制度化し、その診療報酬を治療の単価として積み上げる現状の出来高払方式から、欧州諸国のように、人頭割の包括払方式に転換することが検討されるべきであろう。

 また、現在すでに進められている急性期、高度急性期、回復期といった病床の機能分化を強化し、医療機関間の連携と共同の仕組みをさらに推進すべきである。そのために連携した診療行為全体を含めた包括払方式も検討されるべきではないだろうか。

 感染症病床を保有する病院については、もちろん診療報酬上の特別の手当が必要であるが、恒常的に多数の病床を確保し続けることは困難だ。病床はもとより人的リソースも、非常時に体制をシフトできるような、自衛隊でいう「予備自衛官」のような制度を平時より整備することを検討すべきであろう。