建設時から問題点を指摘されていた

 実は、三峡ダムはもともと設計自体に欠陥があった、と指摘するのは「三峡工程三十六計」の著者でもあるドイツ在住の国土計画専門家、水利エンジニアの王維洛だ。台湾自由時報の取材を受けて、こう語っている。

「実際、三峡ダムに洪水防止機能などないのだ。すでに専門家の検証によって、そのことははっきりしていた。そもそも三峡プロジェクトは、設計から工程、仕上げの監査まで同じ人間がやっていて、審判とプレイヤーが同一人物みたいなものなのだ」

「ダム下流の湖北、湖南、江西ではすでに洪水が発生している。ダム上流の重慶も洪水警報がでている。ダム上流域の人々はダムを決壊させないために、放水させろといい、下流域はこれ以上放水させるな(すでに洪水がひどいのに)という。そういう矛盾があることは、ダム建設前から分かっていた」

「三峡ダムの設計エンジニアである銭正英、張光斗らは、当時の三峡ダム建設プロジェクト副主任の郭樹言に対して、三峡ダム工事のクオリティ、強度に問題があることを手紙で訴えていた。工事期間があまりにも短期であり、完成を急ぎすぎているから、欠陥があるのだ」

「(昨年、三峡ダムが変形していることが判明し、ネットでも話題になったが)ダムの変形よりも問題なのが、ダムの船閘(ロックゲート)周辺から水漏れがあることだ」

つけを払わせられる長江流域の人々

 長江の大洪水は中国の歴史上何度も繰り返されてきた。この暴れる竜・長江の洪水をコントロールすることこそ、中国の国家指導者に求められる能力であり、孫文の時代から三峡ダムプロジェクトの絵は描かれていた。

 だが毛沢東は「頭の上に水の入った盆を置いては熟睡できない」と感心を示さず、1980年代も建設の賛否をめぐる議論は続いた。天安門事件後、当時の首相の李鵬が反対派を抑え込んで強引に実現にこぎつけたものの、プロジェクトは李鵬らを中心とする水利利権派の汚職の温床となり、当時から様々な問題が存在することは内部で判明していた。

 今は、この巨大プロジェクトを強引に推進した李鵬も亡くなり、その責任を引き受ける人物もいない。つけを払わせられるのは、長江流域に暮らす普通の人々だ。

 しかし、中国にはちょっとブラックスワンが多すぎはしないか。新型コロナのアウトブレークも、香港デモも、蝗害も、本当なら万に一つも起こりそうもないブラックスワンだ。

 この調子だと、年内にあと2、3羽飛来してくるのではないか。