ジャンムー・カシミール州の中国と国境を接する区域に掩蔽壕(えんぺいごう)を建てるインド兵(2020年6月16日、写真:Abaca/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国は戦争を起こすかもしれない、と今世界中がかなり真剣に危機感を抱いている。

 一番懸念されるのは米中の偶発的衝突であるが、ポンペオ米国務長官と中国の外交担当の楊潔篪・政治局委員によるハワイのヒッカム空軍基地での会談が6月17日に予定されており、その流れ次第では多少の緊張緩和が期待できるかもしれない。

 それよりも、風雲急を告げる展開になってきたのが、中国・インド国境だ。5月から続いていた緊張関係の末、6月15日に起きた「衝突」では中印両軍合わせて60人以上の死傷者が出ている。国境付近での両軍の衝突で死者が出たのは1975年以来。世界情勢が不安定な中、このまま1962年の中印国境紛争のような危機にエスカレートするのではないかと、世界が固唾をのんで見守っている。