「就業規則の整備」を最優先しておこなうべき
副業を解禁するときは、あらかじめ、就業規則に「副業規定」を整備しておくことが重要です。ルールを決めておかないと、あとで必ずトラブルの元になります。最初から完璧な規定を作ることはできませんが、「副業は許可制にする」というルールを敷いておくだけでもだいぶ違います。具体的には下記のような内容を明記しておくこととなります。
・副業は許可制(もしくは届出制)とすること
・会社業務に支障が出た場合、自社の信用に傷をつけた場合には副業を制限すること
基本的に、企業には従業員の方の自由時間にまで口を出す権利はありません。つまり、副業を規制すること自体、法律的には認められていないのです。しかし、自社の利益を犠牲にしてまで副業を認めるわけにはいきませんから、就業規則でルールを決めておく必要があるのです。
とくに、従業員の健康には留意する必要があります。たとえば、年に1回おこなわれている健康診断を年2回に変更し、1回目は全額会社負担で受診必須、2回目は労使折半(もちろん会社負担でもOKです)で受診を推奨することを明記してもよいでしょう。
また、従業員の方が副業を申し出てきたときに、「なぜ副業をしたいのか」をヒアリングしておくことをおすすめします。従業員が副業を希望する理由としては、下記のようなものが挙げられると思います。
(1)単純に収入を増やしたい
(2)自分のスキルを高めたい
(3)興味のある分野の仕事をしてみたい
ここで、とくに気をつけなければならないのは(1)です。「収入を増やしたい」という理由で副業をする場合、時給が高い分負担が高い仕事を選ぶことで心身の疲労が出やすいケースが考えられます。そうなると、自社の業務に影響が出ることもあり得ますから、どのような仕事に就くとよいか、といった相談にも乗るとよいと思います。
(2)や(3)で留意すべきは「自社の情報漏洩対策」といった類になります。従業員から副業の職種をヒアリングしておくのはもちろんですが、情報漏洩が起きた際の罰則について就業規則に定めておき、従業員に対してもあらためて説明して、確認をとっておくことが必要となるでしょう。たとえば、誓約書を従業員から提出してもらうのもひとつの方法です。
「就業規則」は、厚生労働省の「モデル就業規則」でも作成できるものですが、やはり自社の社風に適したものにしていく必要があります。その際は、労務管理のプロであるお近くの社会保険労務士に相談し、規則の作成とブラッシュアップ続けていくことをおすすめします。
山口善広
ひろたの杜 労務オフィス
社会保険労務士
https://yoshismile.com
著者プロフィール HRプロ編集部 採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。 |