香港が米中対決の引き金になる危険性が高まっている

 現代の戦いは超限戦と言われ、場所や手段を選ばない。

 超限戦は中国の戦争観そのものである。いかなる限界も境界もなく、すべての文明の利器は戦争の手段になりうると見るのが、中国流戦争観の真骨頂である。

 習近平総書記以下の中共独裁政権はいま、超限戦で米国の世界覇権に挑んでいる。

 この挑戦に対し、米国のドナルド・トランプ政権もまた対中封じ込め総合戦略を発動し対決姿勢を露わにしている。

 米中覇権争いは後戻りできないところにまで熾烈化しており、その中での日本の立ち位置もまた問われている。

米国の本格化した対中対決戦略

 米中対決は価値観、体制の対立を根底にして、経済、貿易、金融、情報、技術など、あらゆる面で激化している。

 米国は、鄧小平時代の改革開放以来、中国の経済成長を助ければ、いずれ中国は欧米型の民主化された自由で開放された体制に転換していくとみて、対中関与政策をとり、中国の米国内への投資や貿易関係の拡大、人の交流などを促進してきた。

 しかし、中国民主化の期待は裏切られた。

 例えば、2015年のバラク・オバマ大統領と習近平国家主席の首脳会談で、習近平主席が南シナ海の軍事化の意図はないと約束したにもかかわらず、中国はその後も南シナ海の軍事基地化を強引に推し進めた。

 米国はオバマ政権末期頃から、中国の経済成長がむしろ中国の軍事力の増強近代化や監視社会の強化を促進し、共産党独裁を強化する結果になったことに気づいた。

 トランプ政権は、関与政策を転換し、中国を最大の脅威とみて対中封じこめ政策を展開している。

 トランプ政権は、2018年の『国家防衛戦略』において、「世界的な安全保障環境は、自由で開かれた国際秩序に対する挑戦と、長期にわたる戦略的な国家間の競争再来という特徴を持つ」との、関与政策の前提とは全く逆の国際情勢認識を示している。

 さらにその認識の上に立ち、「米国の繁栄と安全にとり中心的な挑戦勢力」となり、「長期的な戦略的競争者」となるのは、『国家安全保障戦略』において「修正主義大国」と分類され、「権威主義的モデルに合わせて世界を形成しようと欲している中国とロシア」であると、明確に規定している。

 中でも中国については、長期的に最大の脅威になりうる「戦略的競争者」とみて、対抗意識を露わにしている。