昨年夏の甲子園大会の決勝戦、星稜―履正社のワンシーン(写真:アフロ)

 おおむね称賛されているようだ。日本高校野球連盟(高野連)が10日に「2020年甲子園高校野球交流試合(仮称)」を8月10~12日、15~17日の計6日間で開催することを発表した。新型コロナウイルスの感染拡大によって開催中止になった第92回選抜高校野球大会に出場予定だった32校を招待して行う。

 各校1試合ずつの対抗試合が組まれ、センバツ代表校にとっては幻に消えるかと思われた夢の甲子園でのプレーが叶うことになった。優勝校こそ決まらないものの、ほぼ全国各地から集まる試合形式は実質的な「セミ全国大会」と呼べそうだ。

最大限できる限りの感染対策で臨む交流戦

 より多くの選手に出場機会を与えることを目的に、ベンチ入りメンバーは従来の18人から20人へ2枠増やした。感染対策として参加校の現地滞在期間を前日と試合当日の最大2泊とし、近隣校は1泊もしくは日帰りも検討するとしている。関東から西の参加校は公共交通機関を使用せず、地元から貸し切りバスをチャーターして現地入り。無観客開催とすることも決めた。

 最大限できる限りの感染対策と移動のガイドラインを練り上げ、一度は檜舞台に立つチャンスをつかみながら涙を飲んでいた各代表校の3年生部員のためにも開催決定へと漕ぎ着けた。これは素直に称賛されるべきことだと思う。

「だったら夏の甲子園も開催できたのではないか」とツッコミを入れる声もあるが、それは詭弁である。全国から代表校を一気に集め、例年通りのトーナメント方式にすれば多くの勝ち残るチームは長期滞在を強いられ、この交流試合とは比較にならないほどに感染リスクを高めることになるだろう。何よりも、かねてから行うつもりだったセンバツ救済案を実施する前提で物事を進めていけば、これがベストとまでは言わないにせよベターな選択だったと言えるのではないか。

 実際に高野連側はセンバツが中止になった際、参加校に対する何らかの救済措置をとる意向を示していた。夏の甲子園も中止になったことで反故にされると思われたが、水面下でプランは進められていたようだ。主催の高野連を中心に毎日新聞社、朝日新聞社も後援。センバツ、夏の甲子園を主催する両新聞社が呉越同舟でタッグを組み、強力な後ろ盾となった。

 さらにプロ野球の阪神タイガースと甲子園球場が夏の甲子園大会中止が決まっても8月の甲子園使用をそのまま球児たちのために開けていたことで話はスムーズに進み、コロナ禍の逆風を跳ねのける形で夢プランの実現に至った。