なお、当初有力視されていたのは、もうひとつの地上配備型ミサイル防衛である「THAAD」(終末高高度防衛ミサイル)だったが、その後、地上イージス案も急浮上。2016年には防衛省はTHAADか地上イージスのどちらかを選定する作業に入っている。つまり、防衛省が2択選定に入ったのは2017年1月のトランプ政権発足前であり、トランプの要求というのは間違いだ。

 また、米国の要求でより高額な装備を買わされたという批判だが、仮に爆買いが目的であれば、数を揃えなければならないためにはるかに高額となるTHAADを購入するはずである。しかし、実際には日本政府は安いほうの地上イージスを選択している。

 たとえば地上イージスは2基本体だけで約2400億円。これを高額と指摘する向きがあるが、THAADは1部隊あたり本体約1250億円。日本全土を守るのに6~7個部隊が必要として、少なくとも7500億円以上が必要だ。実際にはさらに維持費、訓練費、ミサイル本体購入費などが必要だが、それらを勘案してもTHAADのほうが総額ではるかに高額となる。

 あるいは、イージス艦をさらに増やそうとすれば、イージス・システムの本体の価格に加え、艦の建造費、それに高額の整備費が必要になる。地上イージスは予算の点ではむしろ安いのだ。

無理やりこじつけた地上イージス反対論

 なお、しんぶん赤旗の同記事では触れていないが、地上イージス反対論には、他にもいくつかの論点がある。反対論の論拠と、それに対する反論を列記しておく。

(1)北朝鮮は核やICBMの実験を停止しており、核ミサイルの脅威は低下したから、もはやミサイル防衛は後回しでいい。

→ 実際には北朝鮮は1ミリも非核化をしておらず、事実上、核ミサイル保有国になっている。核戦力は強化されており、脅威はむしろ高まっている。

(2)イージス艦だけで十分。

→ イージス艦のやりくりだけでは常時警戒態勢は難しい。地上イージスで24時間×365日カバーする利点は大きい。

(3)ミサイル多数による同時攻撃に完全には対応できない。

→ ミサイル防衛全体の戦力を厚くすることがむしろ必要。

(4)北朝鮮が開発した低高度滑空型のKN-23短距離弾道ミサイルは迎撃できない。

→ KN-23は日本には届かない。