「当社の強みが発揮できる分野だったのです。当社は今まで様々な業種の企業と付き合い、膨大な改善提案をしてきました。これをAIに学習させていく仕事は当社だからこそできることです」

 自社のデータだけだと見えない改善策があるのだ。例えば、サイト訪問者のコンバージョン率を高めようと努力し、1%から3%へ、7%へ、ついに10%にまで上げたとしよう。一見、理にかなっているように思えてそうではない。

 機会損失をしている可能性があるのだ。お客様になってくれるはずの方のなかの一部しかサイトを訪れておらず、だからコンバージョン率が高い可能性がある。デジタルマーケティング担当者が自社のデータだけを元にPDCAサイクルを回しても、このような“多数のサイトを運用した結果わかったこと”にはたどり着けない。一方、WACULのように3万以上のサイトを分析してAIに学習させれば、データの分析に関しては最適解が出せるようになる。

「しかも、はやく、安くです。すると担当者の方々は、SNSの運用、クリエイティブの制作、WEBコンテンツ創りなど、人間でなければできない部分にリソースを割けるようになります」

 この大淵氏の戦略こそが、未来の経営を先取りしている。AIは導入に高額なコストと、大量のデータが必要だ。以前、筆者はあるAIカンファレンスで“AIは規模が大きい企業から導入が進んでいく”という予測を耳にした。なぜなら導入コストと必要なデータ量が莫大だからだ。しかし、WACULは様々な企業のコンサルティングを実施した結果、“AIの相乗り”とでも言うべき状況を創りあげた。

 ここで、将来的にAIとAIを動かすためのデータは“相乗り”が最適解になるのかもしれない、と予測することができる。そして、スーパーや百貨店など様々な店舗の顧客分析、交通インフラの需要予測、工場の需給予測等々、自社のデータより、各社が相乗りしたデータ、AIが活躍しそうな分野は多数存在するはずだ。

データを「見える化」でなく「わかる化」

 WACULのシステムは、経営者にもよいインパクトを与えるという。